年金時代

山岡 洋秋(やまおか ひろあき)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

第4回 社労士の役割②~労働分野のCSRと健康経営~

健康経営における社労士の役割の2回目は、特定社会保険労務士で、健康経営エキスパートアドバイザーでもある山岡洋秋さんに「労働分野のCSRの観点から」ご解説いただきます。

文章の最後にある産業医・今井鉄平さんによる「コロナ禍における健康経営」も、ぜひご活用ください。

*「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

労働分野のCSR

①労働者の安全や健康への配慮

労働分野のCSR(企業の社会的責任)というと、時間外労働の上限規制や障害者雇用率の達成など、労働関係法令を遵守するイメージがありますが、企業にはそれ以外にも企業活動に関わる全てのステークホルダーに対する社会的責任があり、ステークホルダーには労働者も含まれます。労働者に対する社会的責任は、労働の対償として賃金を支払うことはもちろんですが、それだけでは十分と言えません。

「労働基準法」には、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」と定められています。

また、昭和47年に労働基準法から派生した「労働安全衛生法」の目的は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することであり、その第3条(事業者等の責務)には、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。」と定められています。

さらに、「労働契約法」には、労働者の安全への配慮に関し、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。したがって使用者(事業者)は、法律の最低基準を守っていればよいというものではなく、労働者の安全と健康について配慮しなければなりません。

②新型ウイルスの防止策は大事な取り組み

特に今年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、これまで以上に労働者の安全と健康に配慮する必要性が高まっています。

企業は、アルコール消毒液の設置や従業員へのマスク配布など、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための対策を実施し、飲食店やスーパーマーケット等では従業員の検温、フェイスシールドや手袋の着用、入場制限、換気等、可能な限りの対策をしているところもあります。また、政府の緊急事態宣言を受けて、在宅勤務、時差出勤または一時帰休などを実施している企業も多いことでしょう。

これらの対策を実施せずに、従業員が新型コロナウイルスに感染してしまった場合、安全配慮義務違反を問われる可能性もありますので、注意が必要です。

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山岡 洋秋(やまおか ひろあき)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ヒューマントレジャーサポートオフィス代表。東北電力株式会社にて、営業・人事・労務経験を経て社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、大手企業の労務顧問を担当し、平成20年7月にヒューマントレジャーサポートオフィスを設立。大企業と中小企業の勤務経験を活かし、現在はクライアントの健康経営をサポートし、PDCAを回しながら健康経営優良法人認定に向けて専門家との橋渡しも行っている。
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