年金時代

阿藤 通明(あとう みちあき)/社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

第5回 社労士の役割③~健康経営なくして働き方改革は進まない~

健康経営における社労士の役割の3回目は、社会保険労務士で、健康経営エキスパートアドバイザーでもある阿藤通明さんに「健康経営と働き方改革の関連性」についてご解説いただきます。

文章の最後にある産業医・今井鉄平さんによる「コロナ禍の健康経営」も、ぜひともご活用ください。

*「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

働き方改革とは

平成31年4月より施行された「働き方改革関連法」は、労働に関することで70年ぶりの大改革といわれています。各企業においては、研究・検討を重ね、改良しながら各種取り組みを推進しているものと思われます。社会保険労務士は、労務に関する制度設計、運用のプロです。働き方改革の実践において、現場での豊富な経験や専門知識が多く求められています。

働き方改革の大きな柱は、「働きすぎを防ぎワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方の実現をめざすこと」と、「正規労働者・非正規労働者との間の不合理な待遇差をなくすこと」です。働きすぎを防ぐことは、長時間労働による過労死や脳疾患、心疾患、メンタルヘルス不調等の健康障害を抑制させることにつながり、最重要課題であるといえます。健康経営においても、長時間労働の削減は企業が取り組むべき項目として奨励されています。

さてそれでは、働き方改革の取り組みと健康経営の取り組みにおいては、どちらが優先されるべきでしょうか。一言でいえば、同時に実施すべきものと考えます。どちらかが欠けても企業はまっすぐに進みません。働き方改革と健康経営は、事業を発展させ、前に進めていくための、いわば「車の両輪」であるといえます。

働き方改革と健康経営の関連性

働き方改革の取り組みは、「組織」の視点で実施されるものであり、健康経営は「人」に着目して実施されるものであるといえます。働き方改革の大きな取り組みの一つが「長時間労働の規制」ですが、残業時間の上限規制に罰則も付されたこともあり、企業は労働時間を減らすべく社内制度の見直しに奮闘しているところです。

しかしながら、労働時間を減らすことには成功したものの、それに伴って生産量も落ちてしまっては企業としての発展は望めません。最近では、働き方改革を推進していくうえで企業の考えは、「労働時間の削減」から「生産性の向上」にシフトしているといえます。

そこで重要となるのが健康経営の取り組みです。生産性を高める方法として業務の効率化がありますが、これには仕事の進め方の改善のほか、労働者の質の向上も重要な要素といえます。健康経営の取り組みにより、労働者が健康になれば、やる気にあふれ、集中力が増し、モチベーションが維持され、仕事に対して質の高いパフォーマンスが期待できるようになります。つまり、労働時間を削減し、さらに付加価値を上げることで、生産性を向上させるという図式が成り立つことになります。

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阿藤 通明(あとう みちあき)/社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
社会保険労務士あとう事務所代表。主に就業規則の整備、労働条件変更プロセスにおけるコンサルティングを中心に事業展開している。一方で、健康経営のセミナー講師、取り組み企業の支援のため全国各地を回って活動している。東京都社会保険労務士会働き方改革・健康経営特別委員会働き方改革支援部会長。
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