2020/08/25掲載
第6回 社労士の役割④~経営者に向けて~
健康経営における社労士の役割の4回目は、特定社会保険労務士で、健康経営エキスパートアドバイザーでもある山岡洋秋さんに「経営者に向けて」をテーマにご解説いただきます。
文章の最後にある産業医・今井鉄平さんによる「コロナ禍の健康経営」も、ぜひともご活用ください。 *「健康経営Ⓡ」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。 |
ヒト・モノ・カネと言うけれど
一般的に経営資源と言われている「ヒト・モノ・カネ」のうち、ヒトに関すること、特に従業員の健康は後回しになっている印象があります。もちろん、ほとんどの会社は「労働安全衛生法」に定められている定期健康診断を実施しているのですが、健康について話し合う機会は少ないと思われます。
常時使用する労働者数が50人以上であれば、衛生委員会を毎月開催し、その際に健康に関するテーマについても話し合うと思われますが、夏は熱中症対策、冬はインフルエンザ対策など、テーマがある程度固定化されているかもしれません。衛生委員会で話し合われた内容については、議事録にまとめて従業員に周知をしたとしても、その意図までは伝わっていない可能性があります。法律で決まっているからという理由で(義務感で)衛生委員会を開催すると、議事録に残しやすいテーマに偏ることがあるかもしれないため、何のため誰のために行うのか、常に目的を意識して話し合うとよいでしょう。
従業員一人ひとりまで伝わるかどうかは、経営者のメッセージが大きく影響します。実務的なことは健康スタッフに任せるとしても、なぜ健康経営に取り組むのかについては、経営者みずからの言葉でわかりやすく具体的に従業員に伝える必要があります。その際には、会社の事業目標を伝える場合と同じくらい、もしくはそれ以上に、従業員の健康を大事にしていることを熱く伝えることをお勧めします。
ハーズバーグの動機付け・衛生理論によると、人間は承認されることによって動機付けされますので、健康経営に取り組むことによって会社に対する信頼が高まり、従業員の承認欲求も満たされ、結果として業績向上につながるはずです。
なお、健康優良企業認定制度や健康経営優良法人認定制度の各認定に向けて取り組む会社が増えてきていますが、認定を意識し過ぎると各評価項目をクリアすることだけに意識が向いてしまいがちです。各認定をめざすことは、健康経営に取り組むきっかけとしてはよいのですが、認定を受けること自体が目的化することのないようにご注意ください。