年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長

第22回 確定拠出年金における「期間」とは

確定拠出年金(DC)では、一口に「期間」と言っても、加入者期間、運用指図者期間、通算加入者等期間、通算拠出期間など、さまざまな種類があります。これらは、給付要件の判定や課税所得の算定に影響をおよぼすため、その定義は正確に理解しておきたいところです。そこで今回は、確定拠出年金におけるさまざまな「期間」について解説いたします。

加入者期間・運用指図者期間

確定拠出年金(企業型DC・個人型DC(iDeCo))では、加入者期間を計算する場合は、月によるもの(=月単位)とし、加入者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までを算入するものとされています(DC法第14条第1項および第63条第1項)。この取り扱いは、運用指図者期間にも準用されます(同法第15条第4項および第64条第5項)。

通算加入者等期間

通算加入者等期間は、老齢給付金の受給開始年齢の判定に用いられています。例えば、老齢給付金を60歳から受給開始するためには、10年以上の通算加入者等期間を有する必要があります。通算加入者等期間は、企業型DC・iDeCoの加入者期間および運用指図者期間を合算した期間とされています(DC法第33条第2項)。また、転職等により他の企業型DCや確定給付企業年金等からの資産移換を受け入れた場合は、過去に加入していた企業年金制度等の加入期間も算入することが可能です(同法第54条第2項および第54条の2第2項など)。
通算加入者等期間は、運用指図者期間(=掛金を拠出しなかった期間)も算入されるほか、転職しても不利にならない取り扱いとされているのが大きな特徴です。

通算拠出期間

通算拠出期間は、iDeCoにおける脱退一時金(一定の要件を満たした制度脱退者に特例として支給される一時金)の支給要件の一つとして用いられています。脱退一時金を受給するためには、通算拠出期間が1月以上3年以下(注:2021年4月以降は1月以降5年以下)あることが要件とされています。
通算拠出期間は、企業型DC・iDeCoの加入者期間を合算した期間(他制度からの資産移換に伴い算入した期間を含む)とされています(DC法附則第3条第1項第3項)。前述の通算加入者等期間とは異なり、運用指図者期間が含まれないことに留意が必要です。

所得税法上の「勤続年数」

確定拠出年金の老齢給付金を一時金(一括)で受け取る場合は、退職所得として退職所得控除が適用されます。退職所得控除は「勤続年数」を基に算定されますが、確定拠出年金における勤続年数は、企業型DC・iDeCoの加入者期間を合算した期間(他制度からの資産移換に伴い算入した期間を含む)とされています(所得税法施行令第69条第2項)。なお、企業型DCとiDeCoに同時加入している場合は、両者の加入期間が重複していない期間のみを合算します。
つまり、確定拠出年金において老齢給付金を一時金として受け取ることを念頭に置くと、加入者期間(=掛金を拠出する期間)を極力長くして退職所得控除額を最大化することが税制上有利となります。そのため、例えば転職等により企業型DCの資産をiDeCoに移換する際は、運用指図者ではなく加入者としてiDeCoに加入し、少額でも良いので掛金拠出を継続しておくことが得策です。

 

以上をまとめると、通算加入者等期間、通算拠出期間、所得税法上の勤続年数の関係は、下表の通り表すことができます。
なお、自動移換者(企業型DCの資格喪失後6ヶ月以内に所定の手続きを行わなかったため年金資産が国民年金基金連合会に自動的に移換された者)については、当該自動移換に係る期間は、通算加入者等期間、通算拠出期間、勤続年数いずれにも算入されませんそのため、給付金の受取開始時期が60歳よりも遅くなったり、一時金受給に係る税負担が増えるなどの不利益が生じる可能性があるため、くれぐれもご注意ください。

確定拠出年金における「期間」

加入者期間 運用指図者期間 自動移換者の期間
企業型DC iDeCo 企業型DC iDeCo
通算加入者等期間
通算拠出期間
勤続年数
    ※ いずれも他制度からの資産移換に伴い算入した期間を含む。

 

 

今回のまとめ

確定拠出年金における加入者および運用指図者の「期間」は、給付要件の判定や課税所得の算定において「基幹」となる重要な情報である!!

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会、りそな銀行などを経て、2019年第一生命入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
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