年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長

第23回 確定拠出年金における「機関」とは ~企業型DC編~

企業型確定拠出年金(企業型DC)の制度運営には、制度の実施主体である企業だけでなく、運営管理機関、資産管理機関、商品提供機関など、さまざまな法人・団体が携わっています。今回は、企業型DCにおけるさまざまな「機関」について解説します。

運営管理機関(運用関連運営管理機関)

運営管理機関とは、確定拠出年金法(DC法)第2条第7項に規定する「運営管理業務」を業として営む企業・団体等のことで、略して運管(うんかん)とも称されます。運営管理業務は「運用関連業務」と「記録関連業務」に大きく分かれますが、単に運営管理機関(あるいは運管)と称するときは前者(運用関連運営管理機関)を指すのが一般的です。
運用関連運営管理機関は、①運用の方法の選定および加入者等に対する提示②当該運用の方法に係る情報の提供等、を実施する役割を担います(DC法第2条第7項第2号)。また、主務大臣(厚生労働大臣および内閣総理大臣)の登録を受ければあらゆる法人・団体が実施可能です。2020年8月時点で221社が登録されており、その大半は金融機関(生命保険会社・信託銀行・銀行・信用金庫・証券会社・損害保険会社 etc)が占めていますが、それ以外にも、一般事業会社、コンサルティング会社、印刷会社、アウトソーシング会社、企業年金基金等も運営管理機関の登録を受けています。
※参考資料:運営管理機関登録業者一覧(厚生労働省)

また、運営管理業務を外部委託せず、企業型DCの実施事業主が自ら行うことも可能です。この場合、自社のために行う運営管理業務は「業として営む」ことには該当しないため、上記の主務大臣の登録は不要です。ただし、複数の企業で共同設立した企業型DC制度において、代表企業あるいはアウトソーシング会社等が運営管理業務を実施する場合は、運営管理機関としての登録が必要です(確定拠出年金Q&A No.96)。

記録関連運営管理機関(レコード・キーパー)

前述の運営管理業務のうち記録関連業務(レコード・キーピング業務)は、記録管理に係るシステム開発に膨大なコストを要することから、多くの運営管理機関では、金融機関等によって共同設立された専門会社に記録関連業務を再委託しています。この、記録管理業務に特化した運営管理機関のことを記録関連運営管理機関といい、俗にレコード・キーパー(RK: Record Keeper)とも称されます。
記録関連運営管理機関は、①加入者等に関する事項の記録、保存および通知②加入者等が行った運用の指図の取りまとめおよびその内容の通知等③給付を受ける権利の裁定、を実施する役割を担います(DC法第2条第7項第1号)。なお、上記のうち②および③の業務は、同一の運営管理機関に委託することとされています(DC法施行令第7条第1項第2号)。記録関連業務を取り扱う運営管理機関は、2020年11月時点で下記4社のみです。

・日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T)

・日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(NRK)

・SBIベネフィット・システムズ株式会社

・損保ジャパンDC証券株式会社

資産管理機関

企業型DCの実施事業主は、加入者の年金資産の管理等を目的とした「資産管理契約」の締結を義務付けられています。これは、加入者の年金資産を事業主の資産と分別管理して資産の保全を図るための措置であり、この資産管理契約の相手方のことを「資産管理機関」といいます。
資産管理機関は、①掛金の受け入れ②運用指図に基づく契約手続き(締結・変更・解除等)の執行③給付金の支給④他制度との資産の移受換、等の業務を行います。前述の運営管理機関が記録や運用指図等の「情報」を管理する役割を担っているのに対し、資産管理機関は文字通り資産(お金)を管理する役割を担っています。
資産管理機関は、下表に掲げる資産管理契約の種類ごとに相手方となる金融機関等が異なります(DC法第8条第1項)。実際は、取り扱うことができる運用商品の幅広さから、信託銀行が資産管理機関となるケースが一般的です。

<資産管理契約およびその相手方(資産管理機関)>

資産管理契約 契約の相手方(資産管理機関)
特定運用信託契約 信託会社、信託業務を営む金融機関、企業年金基金
生命保険契約 生命保険会社
生命共済契約 生命共済事業を行う農業協同組合連合会
損害保険契約 損害保険会社

商品提供機関

商品提供機関とは、運営管理機関が選定した対象運用方法(運用商品)を提供する金融機関のことを指しますが、これは法令上の用語ではありません。法令上は、①預金または貯金、②信託、③有価証券、④生命保険または生命共済、⑤損害保険等の対象運用方法について規定しているのみで(DC法第23条第1項)、これらの運用商品を提供する金融機関のことを、俗に商品提供機関と称しています。
なお、商品提供機関が万が一破綻した場合は、各商品提供機関の業法の規定に基づく保護措置(セーフティネット)が執られます。

今回のまとめ

確定拠出年金ではさまざまな「機関」がいろいろな役割を担うが、事業主や加入者の要望を「聞かん」機関が出てこないよう、厳正なモニタリングが必要である!!

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会、りそな銀行などを経て、2019年第一生命入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
年金時代