2020/11/17掲載
同一労働同一賃金に関する最高裁判決から
同一労働同一賃金に関連する5つの最高裁判決が10月13日と15日、相次いで示されました。9回目となる今回の連載では、この5つの判決の内容と今後の実務の対応について、ドリームサポート社会保険労務士法人社員・特定社会保険労務士の下田直人さんが解説します。
10月に判決が出た同一労働同一賃金関連の判決
同一労働同一賃金に関する最高裁判所の判決の主な内容は、以下の表のとおりです。
事件 | 対象 | 判断 | 備考 |
大阪医科薬科大学事件 | 賞与 | 不合理でない(支給しなくて良い)
|
正社員と職務内容に一定の相違があり支給しないことが不合理とはいえない |
メトロコマース事件 | 退職金 | ||
日本郵便事件(3件) | 扶養手当 | 不合理(支給すべき) | 正社員と職務内容に相応の相違があっても、手当や休暇を与えないことは不合理 |
年末年始勤務手当 | |||
祝日給 | |||
病気休暇 |
今回の判決では、契約社員などの非正規労働者への賞与・退職金の支払いの有無から年末年始手当などの各種手当の支給の有無が、改正前の労働契約法第20条(現パートタイム・有期雇用労働法第8条)に照らして適法か否かが判断されました。
旧労働契約法第20条は、「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としています。
労働条件の相違が不合理であるかどうかは、⑴業務の内容、⑵責任の程度、⑶職務の内容・配置変更の範囲、⑷その他の事情という4つの観点から判断することとなります。
今回、立て続けに示された最高裁判所の判決からは、抽象的であるこの4つの観点に一定の一般的枠組みが示されたと読み取ることができます。