年金時代

坂野 祐輔(ばんの ゆうすけ)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

第12回 健康経営の最新動向と将来像

今回は、「健康経営の最新動向と将来像」をテーマに、特定社会保険労務士で、健康経営エキスパートアドバイザーでもある坂野祐輔さんにご解説いただきます。文章の最後には、産業医・今井鉄平さんによる「コロナ禍における健康経営」を掲載しています。新型コロナウイルス感染症の対策にお役立てください。

*「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

健康経営の最新動向

①健康経営優良法人認定への関心の高まり

昨年11月下旬に申請期限を迎え、現在審査中である健康経営優良法人2021の認定法人発表を目前に控え、申請に携わった担当者の皆さまは、無事認定されているか気がかりであるところかと存じます。

2017年の認定から始まった健康経営優良法人は、この2021年に5回目の認定を迎えます。中小規模法人部門においては、初回の2017年ではわずか318法人の認定であったところ、4回目の2020年には5,000弱の法人が認定され、わずか4年で認定数は15倍にも増加しています。さらに、この3月に発表される2021年の認定における申請数は9,000件を超えており、これまでの認定率の推移を鑑みても、認定数は近い将来1万法人を超えることが必至です。

認定数が増加の一途をたどる中、認定基準は毎年少しずつ改定され、ハードルが引き上がっていることを考えると、企業が取り組む健康経営の施策が、質・量ともに充実していることがうかがえます。また、今年より中小規模法人部門の認定法人の中から「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として優良な上位500法人に対して、新たに「ブライト500」の冠を付加して表彰されることとなっています。大規模法人部門の「ホワイト500」と並び、中小規模法人にとって健康経営における最高峰の顕彰制度となり、認定を目指す企業が今後ますます増加することが予想されます。

②健康投資の見える化

また、中小規模法人部門においては、昨年度の認定要件から変更があり、健康経営施策に関するPDCAの意識を強化するため、認定基準において「健康課題に基づいた具体的目標の設定」が必須化されるとともに、新たに「健康経営の評価・改善に関する取り組み」が選択項目として追加されました。そして後者も2022年の認定においては、必須化されることが予定されています。

このような流れは、健康経営において、やみくもに健康に関する施策を行うのではなく、自社における健康課題を把握したうえで、それを克服するための具体的目標を設定し、その目標達成に向け効果的な施策を行うとともに、一定期間後に効果検証を行って改善を図ることで、これまで効果を実感することが難しかった「健康投資の見える化」を図り、より効果的な健康経営を浸透させるねらいがあると考えられます。

この「健康投資の見える化」に関して、経済産業省から昨年6月に大きな発表がありました。それは、「健康投資管理会計ガイドライン」の策定です。このガイドラインは、企業等が従業員等のために創意工夫し、健康経営をより継続的かつ効率的・効果的に実施するために必要な内部管理手法を示すとともに、取り組み状況について企業等が外部と対話する際の共通の考え方を提示したものです。健康経営をすでに取り組み始めていて、効果分析や評価方法を模索している企業が利用することで、健康経営の効果的な実施や、さまざまな市場との対話が可能となることを想定しています。多くの企業がこのガイドラインを活用し、自社の健康経営の効果や評価を社外に開示することで、競争や他社の好事例を自社に取り入れるなどの動きが加速し、健康経営のさらなる普及が期待できます。

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坂野 祐輔(ばんの ゆうすけ)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ばんの事務所代表。法科大学院で身につけた法律全般の知識を活かし、わかりやすい説明と、理論と実務のバランスを図ったアドバイスを心がけ、労働法令に関する相談対応や就業規則の作成・変更を得意とする。行政関連団体や商工団体を中心に年間多数のセミナー講師を務める。健康経営においては、多数の企業に対し支援を行い、健康経営優良法人や健康優良企業の認定実績を増やしている。東京都社会保険労務士会:働き方改革・健康経営特別委員会健康経営推進部会委員。
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