年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長

第25回 DB法・DC法の制定から20年

本年2021年は、確定給付企業年金(DB)法・確定拠出年金(DC)法が制定されて20年目の節目に当たります。この20年で、わが国の企業年金はどのような変遷を辿ってきたのでしょうか。

当初はDB・DCを束ねた「企業年金基本法」として検討

そもそも企業年金に関する新法の検討は、1997年3月28日に閣議決定された「規制緩和推進計画の再改定について」において、企業年金に関する包括的な基本法の制定の検討が明記されたことから始まりました。これを受けて、旧大蔵省・旧労働省・旧厚生省の3省による検討が開始され、同年11月5日には「企業年金に関する包括的な基本法についての検討事項」(リンク先:独立行政法人労働政策研究・研修機構)が公表されました。当時の主要な検討事項は、①受給権保護(受給権の付与、積立義務、支払保証制度)、②受託者責任、③情報開示、④専門家によるチェック体制でしたが、これに加えて、確定拠出型年金の導入も検討事項に挙げられていました。これらの事項は、米国の従業員退職所得保障法(ERISA)を意識した内容であり、当初はDBとDCとで個別の法律を制定することは想定していなかった模様です。

しかし、検討が開始された当時(1990年代末~2000年代初頭)は、公的年金制度の改正や退職給付会計基準の創設といった大きな課題が山積しており、また、経済界を中心に確定拠出年金制度の早期導入が強く要望されていました。そのため、まずは確定拠出年金制度の検討を優先することとし、その後に企業年金の受給権保護を図る制度の検討を開始することとされた結果、現在のDB法・DC法の二本立ての構成になりました。こうした紆余曲折を経て、DB法およびDC法は2001年6月に参議院本会議で可決・成立し、DB法は同月15日に法律第50号として、DC法は同月29日に法律第88号としてそれぞれ公布されました。

DB法・DC法制定後の政策議論の変遷

DB法・DC法制定後のわが国の企業年金のあゆみは、以下に記載のとおりです。2000年代前半は、厚生年金基金の代行返上や適格退職年金の他制度への移行措置など、法的枠組みの変更に伴う制度改正への対応が主体となっていました。2006年には、施行後5年を機に両制度の検討を行うための議論の場として企業年金研究会が設置され、翌2007年7月には同研究会より「企業年金制度の施行状況の検証結果」が公表されました。

その後、2008年のリーマン・ショックや2012年のAIJ事件の発覚等により当該事案への対応が急務となったたものの、2013年9月に厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の下に企業年金部会が新設され、企業年金に関する政策議論は新たなステージで展開されることとなりました。企業年金部会は、2015年1月に「社会保障審議会企業年金部会における議論の整理」を公表した後、2019年2月に企業年金・個人年金部会に改組されました。現在では、企業年金・個人年金部会が私的年金(企業年金・個人年金)に関する政策議論の場となっており、2019年12月には「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」を公表しています。

 <DB法・DC法制定から20年のあゆみ>

2001年 DB法・DC法制定、企業型年金(企業型DC)施行

2002年 個人型年金(個人型DC)施行、DB法施行、厚生年金基金の代行返上(将来返上)開始

2005年 厚生年金基金連合会から企業年金連合会への改組、企業年金のポータビリティ拡充

2007年 企業年金研究会「企業年金制度の施行状況の検証結果」の公表

2008年 リーマン・ショック

2012年 AIJ投資顧問による年金資産消失事案の発覚、適格退職年金の移行特例措置の終了

2013年 社会保障審議会企業年金部会の設置

2014年 厚生年金基金制度の見直し(他制度への移行・縮小)

2017年 個人型DC(iDeCo)の加入対象の拡大、リスク分担型企業年金の導入

2019年 社会保障審議会企業年金・個人年金部会の設置(企業年金部会からの改組)

2020年 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大

折しも2021年は、企業年金・個人年金部会で議論された「DB併用時の企業型DCの拠出限度額の見直し」や「企業年金加入者のiDeCoの拠出限度額の見直し」など、従来の制度の枠組みを大幅に見直す制度改正の実施に向けた議論が行われる見込みです。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大への対応など課題は山積していますが、かかる環境下に左右されることなく、企業年金を含めた老後資産形成全体のあり方について骨太かつ本質的な議論が展開されることを期待します。

今回のまとめ

当コラムでも、制度改正に関する新たな情報が判明次第、この場を借りて追って解説するので、ご期待いただきたい。

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。りそな銀行等を経て、2019年より現職。2015年より日本年金学会幹事、2021年より埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師を兼任。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA)、DCアドバイザー、1級DCプランナー。著書に『人生100年時代の年金制度:歴史的考察と改革への視座』(共著・法律文化社)、『50代から知っておきたい! 年金生活の不安、解消します』(共著・幻冬舎)など。
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