年金時代

長沼 明(ながぬま・あきら)/浦和大学客員教授・前埼玉県志木市長

加給年金額の支給停止ルールの見直し~令和4年4月1日施行~

「令和2年改正法」(令和2年法律第40号)の施行に伴い、加給年金額の支給停止ルールの見直しが行われます。施行時期は令和4年(2022年)4月1日です。

夫婦とも厚生年金保険に20年以上加入している場合は、原則として、妻が全停であっても、夫の加給年金額は支給停止に!

今回の加給年金額の支給停止規定の見直しについては、令和3年6月19日に締め切られた厚生労働省のパブリックコメントにおいて、次のようにその理由が述べられています。

少し長いですが、ヘンに要約するといけませんので、そのまま掲載します(【図表1】参照)。
小見出しというか、小タイトルもそのままです(「加給年金額」ではなく、「加給年金」と表記されている)。

【図表1】  「加給年金の支給停止規定の見直し」に関するパブリックコメント

 ⑤ 加給年金の支給停止規定の見直し

○ 加給年金額の加算の基礎となっている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が 240 月以上であるものに限る。)等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有している場合には、加給年金額に相当する部分の支給が停止されるが、配偶者の年金給付の全額が支給停止となっている場合には、この支給停止が解除されることとなっている。

○ 配偶者の老齢厚生年金等が一部でも支給されている場合には加給年金が支給されない一方で、配偶者の賃金が高く、在職老齢年金制度によりその全額が支給停止となっている場合には加給年金が支給されるといった不合理が生じていることを踏まえ、配偶者が老齢厚生年金等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有する場合には、その全額が支給停止されている場合であっても、加給年金額に相当する部分の支給を停止することとする。

(注)一部文言を、筆者が削除している。

令和3年8月6日には政令(令和3年政令第229号)も公布され、厚生労働省年金局長・保険局長名による通知文も発出されています(「年発0806第1号」「保発0806第1号」)。

「⑤ 加給年金の支給停止規定の見直し」のタイトルが、「6 加給年金の支給停止ルールの改善」 に!

通知文の該当する箇所をみると、「⑤ 加給年金の支給停止規定の見直し」のタイトル名が、「6 加給年金の支給停止ルールの改善」 に変わっているだけで、基本的に、本文はパブリックコメント時と変わっていません。ほぼ同じですので、同じ文章を2回掲載しても意味がありませんので、ここでは略します(通知文は厚生労働省のホームページにアップされている)。

すでに述べたように、通知文では、「支給停止ルールの改善」とタイトル名が変更になっています。本稿では、足して2で割ったわけではありませんが、「加給年金額の支給停止ルールの見直し」の表記で書き進めていきます。この表記のほうが、変更内容を的確に表現していると思えるからです。

さて、「加給年金額の支給停止ルールの見直し」 の内容については、【図表1】に記したとおりで、これ以上の補足説明は必要がないように思えます。しかしながら、これには経過措置があります。

【図表2】のイメージ図をご覧ください。

図表2】

 

令和4年4月からは、支給停止基準額が28万円から47万円に! 全停から一部支給に変わった場合の経過措置はどうなのか?

すでにご案内のように、令和4年4月1日からは、在職老齢年金制度の支給停止基準額が、低在老(65歳未満の厚生年金保険被保険者に適用)も28万円から47万円に変更になります(いずれも令和3年度の金額)。

そうすると、支給停止基準額が28万円のときは、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止であった人も、支給停止基準額が47万円に変更になると、一部支給または全額支給になる人も出てくることが想定されます。

その場合、令和4年3月31日に加給年金額が加算されていた配偶者(たとえば、夫)の加給年金額は、4月1日以後は、引き続き加算されて支給されるのでしょうか。

それとも、夫婦とも20年以上厚生年金保険に加入しているのだから、妻の厚生年金が支給されるか・支給されないかにかかわらず、見直しされた「加給年金額の支給停止ルール」が適用されて、夫に加算されていた加給年金額は、支給停止になってしまうのでしょうか。

はたまた、妻の総報酬月額相当額が高く、妻の厚生年金が引き続き全額支給停止であれば、配偶者である夫に加算されていた加給年金額は、引き続き支給されるが、妻の厚生年金が一部でも支給されれば、配偶者である夫に加算されていた加給年金額は、支給停止になってしまう、という経過措置なのでしょうか?

ということで、この続きはクリックして、引き続き、お読みください。

なお、筆者(長沼)の原稿は、従来通り、無料で読める原稿に変わりありません。
また、筆者は制度改正のすべてを網羅して記述しているわけではなく、あくまでも取り上げた事例についての解説であるということを、あらかじめお断りしておきます。

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長沼 明(ながぬま・あきら)/浦和大学客員教授・前埼玉県志木市長
地方公務員を中心に共済組合等の年金に関する第一人者。埼玉県志木市長を2期8年務め、市長在任中に日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員、日本年金機構のシンボルマークの選考委員を歴任。著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(年金・福祉推進協議会)などがある。
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