2022/03/25掲載
#6 脳梗塞による請求事例
脳梗塞等の脳疾患は、およそ40歳代から発症のリスクが高まっていき、50歳代から60歳代にかけてピークを迎えます。日本の傷病別死因では、例年3位か4位に位置づけされ死亡率の高い傷病ではありますが、一命は取りとめたとしても、高確率で後遺症が残る傷病でもあります。
この後遺症が重い症状ですと、障害状態となってきますので、障害年金の請求も考慮に入れなければなりません。今回は、脳梗塞により重たい後遺症が残ってしまった方における障害年金請求の事例を検証していきます。
目次
事例●脳梗塞による障害厚生年金請求
⑴脳疾患系の障害は、障害の部位を見極め見逃さないこと
⑵脳梗塞の初診日について
⑶異なる障害部位が併存する場合について
⑷脳疾患による肢体障害について
⑸脳疾患による高次脳機能障害について
⑹請求方法の選択
⑺病歴就労状況等申立書の記載内容について
今回の相談者に案内する回答例
まとめ――今回の相談事例の勘所は3つとその後
事例●脳梗塞による障害厚生年金請求
脳梗塞等の脳疾患系の傷病から発生する後遺症は、多岐にわたります。脳の機能が損傷することによって、運動麻痺が発生したり、言葉がうまく喋れないようになったりします。
また、認知機能が低下して記憶障害等を引き起こすこともあります。従って、障害年金を請求する際は、その傷病名の他に、どの部位に、どのような後遺症が、どの程度重く残存しているかが重要です。具体的に見ていきましょう。
⑴脳疾患系の障害は、障害の部位を見極め見逃さないこと
今回の相談事例は、相談者本人(以下「相談者」という。)がうまく喋れないので、親族が付き添って(以下「付添人」という。)相談に見えられています。そこで、相談者にはどのような後遺症があるかを、付添人に伺ったところ、左半身に麻痺があり、特に右腕が全く動かないとのことでした。こうして見ると、肢体障害がまず考えられます。
しかし、うまく喋れないから付添人がいるわけですから、言語障害もあるかもしれません。併せて伺ったところ、呂律が回らない等の症状ではないが、うまく頭の中で言葉が出てこないため喋れないとのことでした。さらに、以前はしなかった物忘れもかなりするようになったとのこと。脳梗塞により認知機能にもダメージがあることが想像できます。このような症状を高次脳機能障害と言い、障害年金においては、精神の障害に分類されます。
つまり、脳梗塞により肢体と精神の後遺症が発生していることになりますので、2種類の障害状態について、個別に見ていく必要があります。