年金時代

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

未支給年金の受給権者は死亡者の子か、兄か?

今回は、障害年金の受給者が死亡し、受給者の子どもと、受給者の兄がそれぞれ未支給年金を請求しに年金事務所を来訪したケースです。子どもも兄も、受給者とは同居しておらず、どちらに受給者との生計同一関係が認められるかがポイントです。

【事例概要】
死亡者:Aさん (昭和33年5月10日生まれ:63歳)
・20年前に離婚して一人暮らしに
・障害基礎年金・障害厚生年金を受給中に死亡

 

請求者:Xさん(昭和57年7月15日生まれ:39歳)
・Aさんの長男で、両親の離婚時、母親と同居することに

請求者:Bさん(昭和30年11月10日生まれ:66歳)
・Aさんの兄で、Aさんと同じマンションの1階下に居住してAさんの世話をする

 

父親が死亡し、長男が未支給年金を請求

父親Aさんが死亡したとのことで、Aさんの長男であるXさんが令和4年2月10日の午前中に未支給年金の請求にみえました。

Aさんは、障害基礎年金と障害厚生年金の受給権者で、20年ほど前に離婚し、その後は保険金や貯金をやりくりして一人で生活していましたが、Xさんの話によれば、居住地は別ですが、生計同一であったとのことだったので、「生計同一申立書」に必要事項を記入してもらいました。

国民年金法第19条第1項によると「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」となっています。

また、同法施行令第4条の3の2で「未支給の年金を受けるべき者の順位は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の三親等内の親族の順序とする。」と規定されています。なお、厚生年金保険法第37条第1項及び同法施行令第3条の2においても同様に規定されています。

同居していない親子の生計同一関係の要件

「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号通知)によれば、生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又はである場合、住所が死亡者と住民票上異なっている場合に、死亡者との生計同一関係が認められるためには、次のいずれかに該当する必要があるとされています。

ア 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
イ 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ア)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ)定期的に音信、訪間が行われていること

来所したXさんが記載した「生計同一申立書」によれば、Aさんと別居している理由として「結婚のため」、生計同一である具体的な事実については「食料品や衣服を送り、半年に1度程度会いに行っていた」となっていました。また、音信としてメ-ルのやり取りを行っていたとも記載されていました。また、口頭での話で、両親が離婚したときに、Xさんは母親と同居していたこともわかりました。

このような状況から、「23年通知」に照らしてみると、アには該当しないことは明らかです。イに該当するかをみると、定期的に音信、訪間が行われているようですが、生活費、療養費等の経済的な援助を行っていたと認めるのは困難な状況と思われます。

そこで、「生計同一申立書」に生計同一である事実についてもう少し具体的なものがないかを考えて、未支給請求書に必要書類を添付して、再度の来所をお願いしてお帰りいただきました。

兄も、弟の死亡に際して未支給年金を請求

その日の夕方、Aさんの兄であるBさんが、弟が死亡したとのことで未支給年金請求に来所されました。前記のとおり、未支給年金の請求順位は午前中に来所したAさんの子であるXさんが上位です。しかし、いったんBさんの話を聞くことにしました。

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石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー
電子計測器メーカーで資材部長・営業部長・厚生年金基金常務理事を経験。定年退職後、社会保険労務士事務所開業。千葉県内の年金事務所の年金相談員経験者。豊富な相談事例をもち、雑誌、書籍等多数執筆。
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