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年金時代編集部

#7 薬の副作用による肢体障害請求事例

相当因果関係とは、よく刑事事件でも使われる用語ですが、「あれなければ、これなし」と言う考え方は、障害年金においても同様であり、この傷病がなければ、現在の障害はなかったであろうと認められる関係のことを言います。
例えば、糖尿病にならなければ、腎臓を傷つけることがないため、慢性腎不全にはならなかったであろうと考えられるから、糖尿病と慢性腎不全は相当因果関係がありとして、初診日が糖尿病のときのものになるわけです。
このように、直接的に障害部位にダメージを与える傷病との間に相当因果関係が成立しますが、中には治療するために服用していた薬の副作用によって、全く別の部位がダメージを受け、障害状態になる場合もあり、これも相当因果関係があるとされる例もあります。今回は、そのような薬の副作用による障害請求事例を検証していきます。

目次
事例●人工骨頭挿入置換による障害厚生年金請求
薬の副作用も相当因果関係あり
初診日は副作用の薬(ステロイド)を使用した傷病
初診日が遡ったことにより事後重症請求へ
診断書は肢体の障害用(様式120号の3)
病歴就労状況等申立書は因果関係がある傷病から
今回の相談者に案内する回答例
まとめ――今回の相談事例の勘所は2つ

事例●人工骨頭挿入置換による障害厚生年金請求

人工骨頭を挿入置換すると、障害年金3級以上とされています。また、初診日から1年6ヶ月経過していなくとも、その挿入置換した日を障害認定日にすることができます。従って、相談者の場合、令和3年11月10日が初診日とすれば、令和4年4月20日(挿入置換日)を障害認定日として、障害厚生年金の請求ができることとなります。
ですが、ここで注目すべき点は、大腿骨頭無腐性壊死という傷病です。

薬の副作用も相当因果関係あり

まず、大腿骨頭無腐性壊死という傷病は、大腿骨の骨頭への血流が遮断され、その骨端部の骨が壊死するという疾患です。
なぜ、血流が遮断されるかは、外傷やアルコールの多飲等、考えられる原因は多岐にわたりますが、その中にステロイド薬使用による、副作用もあります。従って、一見、大腿骨頭無腐性壊死とは全く関係のない傷病でも、ステロイド治療をしていた場合、その傷病と相当因果関係があることになるため、ステロイド薬を使用した既往歴がないか、相談者には確認する必要があります。
これを踏まえ、今回の相談者に伺ったところ、以前にスティーブンス・ジョンソン症候群を患い、その治療としてステロイド薬を使用したとのことでした。
このスティーブンス・ジョンソン症候群は、主として皮膚や粘膜に赤い斑点のような病変が出現し、高熱が出る場合もあります。
この傷病になる原因としては、ウイルス感染や薬剤使用による副反応が発症契機として挙げられていますが、詳しくは判明していない難病です。今回の相談者は、61歳の春ごろ、38度程度の発熱と顔や身体に赤い発疹が出現したため、近所のC内科を受診しました(この受診日は、令和2年6月12日と後に判明)。
最初は風邪、若しくは手足口病の疑いと診断されましたが、処方された薬を飲んでも、症状が一向に改善されないことから、その内科医の紹介で、大学病院に行くことになりました。令和2年7月2日にM大学病院で精密検査を受けた結果、スティーブンス・ジョンソン症候群であることが判明し、会社を休職して、2ヶ月程度入院することとなりました。その時、ステロイド治療を実施したとのことでした。
退院後は、3ヶ月程度通院をしましたが、経過が良かったため、その後はこの病気で受診はしていません。今思えば、通院している時から股関節に少し違和感があったようにも感じる、と思い返しています。
以上のことから、今回の大腿骨頭無腐性壊死は、スティーブンス・ジョンソン症候群の治療のために使用したステロイド薬の副作用であることが分かります。

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