2022/05/17掲載
同一労働同一賃金の近況① ~全面施行から1年経って~
労働分野の実務の参考となる情報を提供する「プロが伝える労働分野の最前線」第27回のテーマは、同一労働同一賃金の近況です。法律が全面施行されてから1年が経過するなか、企業はどのように対応し、どのような状況にあるのでしょうか。ドリームサポート社会保険労務士法人の竹内潤也さんが解説します。
同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指して導入された同一労働同一賃金ですが、関連する改正法が全面施行されてからこの4月で1年が経過しました。
▶パートタイム・有期雇用労働法:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行
▶労働者派遣法:2020年4月1日より施行
働き方改革の施策の目玉のひとつとして、最初の施行日である2020年4月1日の前後には、報道も増えることも相まって、大きなムーブメントが起こることが予想されました。
当時の、旧労働契約法20条に基づく、有期雇用労働者についての最高裁判決の報道の注目度を見ても、労使ともに、同一労働同一賃金の導入に高い関心が集まっていたと言えます。
我々社労士業界も、法改正に向けた審議会での議論のころから準備を始め、顧問先へのコンサルティングなどを通じて、法施行に向けた実務的な作業を進めていたところです。
ところが。
2020年4月1日前後は、どのような時期だったか覚えていますでしょうか。
そうです。新型コロナウイルス感染症の広がりによって、2020年3月24日には、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定し、外出制限などが議論され、ついに4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発せられるという状況でした。
過去に経験のない状況になり、働き方改革に関する報道はほとんど見られなくなり、同一労働同一賃金についても、話題にならなくなりました。
一方、通勤自粛や子供の休校等によるテレワーク、3密回避のための時差出勤、休業状態からの収入確保のためのギグワークなどの副業・兼業など、働き方改革としての側面ではなく、そこに掲げられたメニューが新型コロナウイルス対策として実施・推進されていき、実際的な働き方が大きく変わりました。
このようにして、同一労働同一賃金は静かに施行日を迎えました。
さらに、大企業への施行の翌年である、昨年2021年4月1日の中小企業へのパート・有期雇用労働法の施行も前年ほどではないにしても、あまり大きな話題とはならなかった印象です。この時は、70歳までの就業に関する法改正(高年齢者雇用安定法の改正)のほうが注目が大きく、労務相談の現場でも多く取り扱われました。
そのように始まった同一労働同一賃金ですが、労務相談の現場での近況をご紹介します。