年金時代

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

胃がんのため退職し、脳出血で死亡した場合、遺族厚生年金を受給できるか?

今回は、胃がんのために退職し、胃がんが悪化して再入院中、脳出血により死亡した事例をご紹介します。会社退職後の死亡であり、在職中に初診日のある胃がんと、死因の脳出血との因果関係が問われるケースです。医師による医学的見地からの申立書がポイントとなりました。

【事例概要】
死亡者:A夫さん(昭和51(1976)年10月10日生まれ/45歳/会社員)
・平成13(2001)年4月1日、入社(25歳)
・平成30(2018)年5月10日、胃がんの初診日
・令和元(2019)年7月31日、胃がんのため退職
・令和4(2022)年4月4日、脳出血のため死亡
請求者:B子さん(A夫さんの配偶者)
・令和4年4月18日、遺族厚生年金の請求のため来所

会社を退職後に死亡した場合

A夫さんが死亡したとのことで、配偶者であるB子さんが遺族厚生年金の請求に来所されました。A夫さんの年金加入記録をみると、厚生年金保険の被保険者期間は平成13年4月1日から令和元年8月1日までの約18年間で、その後、国民年金保険料が全額免除となっていました。このことから、A夫さんの死亡は厚生年金保険加入中ではなく、会社を退職しておおよそ4年後であるとわかります。なお、学生であった20歳から入社までの国民年金保険料は未納の状態でした。

次に請求者であるB子さんの話と持参書類(戸籍謄本、死亡診断書等)から、A夫さんは令和4年4月4日に、脳出血を直接死因として死亡したことが確認できました。また、B子さんがA夫さんの配偶者であることは明らかで、夫婦に子はいません。

厚生年金保険法第58条第1項では、次のように規定しています。

遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあっては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

 被保険者(中略)が、死亡したとき。
 被保険者であつた者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であつた間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき。
 障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。

A夫さんについて見てみると、第一号、第三号及び第四号には該当しません。そこで、第二号に該当するか、確認していくことにしました。

最初に保険料納付要件をみると、「3分の2要件」を満たしています。次に、死亡診断書によれば、死亡日は厚生年金保険の被保険者資格喪失日(令和元年8月1日)よりも後になります。初診日は平成30年5月10日となっており、厚生年金保険の被保険者期間中です。また、初診日から5年経過する前の死亡です。

ところが、初診日傷病は「胃がん」となっています。そこで、死亡の直接原因となった「脳出血」との間に、「相当因果関係」が認められるか否かが、この事例の問題点となります。以下のように、本件の問題点について検討していきました。

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石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー
電子計測器メーカーで資材部長・営業部長・厚生年金基金常務理事を経験。定年退職後、社会保険労務士事務所開業。千葉県内の年金事務所の年金相談員経験者。豊富な相談事例をもち、雑誌、書籍等多数執筆。
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