年金時代

小野田 理恵子(おのだ りえこ)/小野田社労士・FPオフィス代表

第10回 ボーナスにまつわるあれこれ

小野田理恵子氏が、これまでに社労士として、また会計事務所の事務員として、あるいはFP講師として経験してきたさまざまな実務の中から、参考になる事例を順次紹介します。制度やしくみが実務ではどう展開するのか、事例を切り口とした解説により、目からウロコの情報が満載です。

特殊な取扱いの賞与計算

7月の声を聞くと、世間では夏のボーナス(賞与)を手にした方が結構いらっしゃるのではないでしょうか。我が家は長年自営業世帯でボーナスとは無縁のため、若い頃はこの時期の「夏のボーナスセール開催中!」のような大々的な広告にいちいちイラッとしたものです(笑)。

さて、この賞与支給時の税金や社会保険料について、給与計算や社会保険の手続き業務を行っている方にとっては当たり前のことでも、一般の方はほとんどご存じない大事なルールがあります。賞与の手取り額や将来の年金額にも影響しますので、今回はこの賞与計算の取扱いについて2つの実務経験を絡めて解説したいと思います。

賞与にかかる所得税額の計算

20年近く前、私がまだ給与計算の初心者マーク付きの頃のことですが、冬の賞与支給時に、顧問先のM社の奥様(会社の事務全般を担当)からのこんな電話にドキッ!としました。
「従業員のKさんが、“ボーナスから引かれている税金が絶対に多すぎる!”と言っているのですが…」

大慌てで確認すると、夏と冬の賞与の支給額はまったく同じなのに、確かに所得税が倍になっていました。でも、これはまったく間違いではありません。理由は、賞与から天引きする所得税額の計算には、前月の給与の額が大きく影響するからです。
計算例を挙げて説明しますので、<図表1>とともにご確認ください。

国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」とその下の夏・冬の比較表に沿って、まず夏(7/1)の賞与(総支給額50万円)にかかる所得税額の計算手順を見ていきます。

  • Kさんの扶養親族等の数は1人なので、「1人」の列を使用。
  • 比較表の青い数字のKさんの前月(6月)の「社会保険料等控除後の給与等の金額」は242,250円。
  • 上の算出率の表でこの金額が含まれるのは、青四角で囲った「94千円以上243千円未満」の行
  • この行を青矢印に従って左にたどると、「賞与の金額に乗ずべき率」は2.042%であることがわかる。
  • 賞与の社会保険料等控除後の金額(比較表の①)にこの率を掛けると所得税額は、425,000円×2.042%≒8,678円となる。

次に冬(12/1)の賞与についても緑の数字囲み矢印をたどって同様に計算すると、税率が4.084%、所得税額17,357円になります。11月の給与の総支給額は6月より1万円多いだけなのに、冬の賞与にかかる所得税額は倍になってしまったわけです。

この場合に、Kさんにただ「間違いではありませんでした」と伝えてもらうだけでは納得は得られにくく、「計算のルールによって今回はたまたま所得税を多めに預かることになりましたが、最終的には年末調整によって年間の所得税額を精算します。ですから損得は生じませんのでどうかご理解ください」と説明してもらって一件落着しました。

この件には後日談があり、その後M社の奥様からは、毎回の賞与を支給する前に、6/30支給と7/1支給の2パターン(冬は11/30と12/1)の試算を依頼されるようになりました。奥様は「せっかくなら従業員の手取り額が少しでも多くなるほうで支給したい」と考えられたようです。従業員数10人未満の小規模事業所だからこそ可能な柔軟な対応で、私はその発想に「なるほど!」と思いました。

賞与にかかる社会保険料と年金額への影響

これは、かつて年金事務所で年金相談員を務めていたときに、60代前半の男性から実際に受けた質問です。
その方は再雇用で働いていた会社を退職され、年金額の確認のために来所されました。試算結果をご覧になって「前に試算してもらった金額より今回のほうがちょっと少ないのはどうしてですか? 給与も賞与も定額でまったく変わっていないのに」とのこと。

これ以降はnote年金時代(有料)でご覧いただけます。

小野田 理恵子(おのだ りえこ)/小野田社労士・FPオフィス代表
会計事務所で補助者業務に従事する傍ら、社労士とFPの資格を取得。開業社労士としての実務と並行して、FP資格も活かして講師業にも携わり、大手企業、労働組合、公的機関、各種団体等で、セカンドライフセミナーを中心としてさまざまなテーマでの講演を行っている。以前に5年ほど年金事務所で相談員を経験。特定社会保険労務士、CFP®、高度年金・将来設計コンサルタント。
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