年金時代

インタビュー 水島藤一郎・日本年金機構理事長

平成27年5月、不正アクセスによる情報流出が日本年金機構を襲った。同年9月、厚生労働大臣から示された業務改善命令に基づき、機構は同年12月、「業務改善計画」を厚生労働省に提出。併せて、それを具体化した、約70の改革事項からなる「日本年金機構再生プロジェクト」を策定した。平成28年度からの3年間を集中取組期間とする同プロジェクトはこの3月に初年度を終了。今年度が2年目に当たる。業務改善計画はどのように進められたのか。また、2年目にはどう取り組むのか。水島藤一郎・日本年金機構理事長に聞いた。

機構再生プロジェクトでは

初年度に改革の「形」をつくり、2年目に「中身」を入れます

「現場重点主義」と「自ら考え、自ら改革」を再生プロジェクトの基本コンセプトに

――再生プロジェクトが1年目を終えましたが、この1年、どう取り組んできましたか。

業務改善計画の柱は、不正アクセスによる情報流出事案への対応ということですが、日本年金機構という組織の一体化ということが、大きなひとつのテーマでもありました。それというのも、平成27年8月に当機構の内部調査委員会(「不正アクセスによる情報流出事案に関する調査委員会」)の報告書や、厚生労働省に設置された「日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案検証委員会」の検証報告書では、本事案が発生した基本的な要因の根底には、「組織としての一体感の不足」「ガバナンスの脆弱さ」「リーダーシップの不足」「ルールの不徹底」などの構造的問題があると指摘されていました。
そして、この原点には、やはり組織の一体化ということが問われていたのだと認識しています。そこで、組織の一体化に向けて、どのように改革を進めていくかということを、業務改善計画を具体的に実行していくにあたり、基本的な考え方、コンセプトとしたのです。

――機構の組織としての状況をどのように捉えていたのですか。

旧社会保険庁のときには、社会保険庁本庁と各都道府県の社会保険事務局とが異なる役割を担っていました。政府管掌年金の業務運営という目的は同じなのですが、社会保険庁は法律の解釈に基づいて企画立案し、それを実行するための通知を出すのが基本的な役割であるのに対して、各県にある事務局の役割はその指示を受けて、実務に落としていくことにあったのです。
そして、社会保険庁が日本年金機構になったときに、年金制度を執行する機関になりました。その意味で、東京・高井戸にある日本年金機構の本部と現場とが、まさにその目的において一体となったのです。しかしながら、組織形態は、依然、従来のあり方が残っていたのです。

――そこで、どう組織の一体化を進めていくことにしたのでしょうか。

機構は年金制度の運営執行機関でありますので、お客様との接点である現場を中心とした「現場重点主義」の組織として一体化を図り、「お客様を向く組織」に改革していくことを、再生プロジェクトのコンセプトとしたのです。
また、私が4年前に当機構の理事長に着任したときに、労働組合の委員長が挨拶に来ましたが、そのとき忘れもしないのが、「誇りを持てる職場にしたい」という組合委員長の言葉でした。私は民間出身ですが、民間企業は言ってみれば、自分のために仕事をします。それが、結果として、社会に受け容れられれば、その仕事も社会的に意義のある仕事となります。年金制度を運営執行する機構の仕事は、そもそも社会的に必要な仕事です。その仕事に誇りが持てないということはあり得ないのです。職員が誇りを持てないと感じているのであれば、それはこの国にとって、たいへん不幸なことです。
そこで、職員一人ひとりがこの組織の意義をもう一度考え、それぞれが担っている仕事に自信と誇りを持ち、社会から評価される組織にしていかなければいけません。だから、「自ら考え、自ら改革」して、機構を「誇れる組織」にしていくこともプロジェクトのコンセプトとしたのです。

図表1●再生プロジェクトの概要(全体像)

出典:「日本年金機構再生プロジェクトの取組状況~策定から1年間の歩み~」日本年金機構再生プロジェクト推進室(平成29年2月2日)(図表2・3も同様)

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