年金時代

【書評】香取照幸著『教養としての社会保障』(評 細野真宏)

現場の中枢で仕組みを考え続けた真の官僚が世に問う社会保障論

評 細野真宏/経済解説者

 

まず、この本で一番注目されるのは、間違いなく「著者」だろう。とは言っても、ほとんどの人(勿論『年金時代』の読者は別として)は「香取照幸って誰?」という感じなのでは。実は何を隠そう、私自身もその一人だったからだ。私が香取さんと最初に会ったのは恐らく2008年の社会保障国民会議。当時は参事官として会議を取り仕切っていたが「官僚」は良くも悪くも「自分」を消している場合が多い。なので、官僚の人で認知できたのは基本ゼロだった。

世間では「政府の会議は官僚の振付で形式的に行われている」が常識のようだが、「振付どころか顔も知らないんだけど…」という程度が実態なのでは。私は、いつも自由に言いたい放題やらせてもらっている。

とは言え、私が人を覚えないのは度を越えているのかもしれない。年金を中心に誤解が多すぎたため2009年に国民会議をネタに年金の新書を書き上げたのだが、共通の知人が「細野さんの新書、香取さんが『すごい構成だね』と褒めていたよ」と言い、「え、ホント?でも香取さんって誰でしたっけ?」と尋ねると、「信じられん」という呆気にとられた顔をされたのを、今でも失態として忘れることができない…(笑)

そんなエピソードもあり、香取さん関連の会議にはよく出るようになったのだが、会議ではよく会うのに一度もご飯に行ったこともないためか、実は未だにどんなキャラクターなのかが見えてこない。ただ、周りの評価は異常なまでに高すぎて「将来の厚生労働省を背負って立つ人」という点では全員が一致していた。ところが、これも香取さんらしい、といえばそうなのだろうが、年金局長時代に厚労大臣との方針が違う!と真っ向から異を唱え、今の官邸権力集中時代の犠牲者となり、誰もが疑わなかった「香取厚労事務次官」は遂に実現せずに終ってしまったのだ。

⇒次のページ 要するに誰もが認める真の官僚とは、一貫して「専門家」である

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