年金時代

インタビュー:木下賢志・年金局長

財政検証に向けた議論では、内閣府の経済見通しも参考にした

幅広い検討を進める

新たに就任した木下賢志・厚生労働省年金局長は7月27日、厚生労働省内において専門誌記者クラブの共同取材に応じた。公的年金の次期財政検証に向けた議論のポイントやマクロ経済スライドのあり方など、課題解決に向けた今後の取り組みを語る一方、年金制度に対する国民の理解向上のカギとなる考え方について言及した。


――就任にあたっての感想・抱負をお聞かせください。

年金局は今回で3回目となります。初めは平成元年に当時の企業年金課で、次が平成16年改正でマクロ経済スライドを導入したときです。当時、総務課の企画官として議員に説明などを行っていました。それ以来、年金に携わるのは13年ぶりとなります。直前まで、一億総活躍・働き方改革を担当していましたが、年金制度と働き方は深いかかわりがあります。働き方が変われば、年金制度をどう融合させるかという話になりますので、そういう観点から全力で取り組みたいと考えています。

年金は制度の安定や持続可能性が第一で、確実に給付へ結びつけるミッションがあるため、しっかり政策立案することが重要と考えています。一方、制度が複雑で難しいということから、国民の年金に対する理解とわれわれが提案している考えとの間で乖離が生じる点があります。これを埋めるのも年金行政にとって大事なことだと思います。もう一つ重要なのが運用です。適正な運用がセットとなって初めて信頼に足る制度となりますので、日本年金機構やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、企業年金連合会、国民年金基金連合会など、現場に近い組織と呼吸を合わせ、一体となって取り組んでいきたいと考えています。

――昨年成立した年金制度改革法などを踏まえ、現行制度をどのように見ていますか。

デフレ下におけるマクロ経済スライドの適用は、平成16年改正当時からの課題だったので、13年前の改革の宿題が一部達成されたとの思いがあります。あくまでキャリーオーバーというしくみのなかではありますが、考え方として制度に導入されたのは大きな前進です。年金額改定ルールの見直しでもう一つ行った、賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動で年金額改定する考え方の徹底は、厳しい改革ではありますが、将来の受給世代といまの高齢者世代とのバランスの問題であり、いまの高齢者世代が将来の受給世代のことを考える大きな材料になると思います。

中小企業における労使合意に基づく短時間労働者への被用者保険の適用拡大は、社会保険の整備を進めることができ企業にとっても求人活動の売りになります。特に労働力不足の割合が高い業種で、人材確保の道が開かれると思います。このほか、GPIFのガバナンス改革では、透明性の高い組織運営をめざし、今年10月に経営委員会がスタートします。140兆円もの年金資産を運用するわけですから、適正なリスク管理の下、できる限り利益を生む運用に努めていただきたいと考えています。また、受給資格期間の短縮では、年金権に結びつく方が新たに67万人発生するので、漏れなく対応を進めたいと思います。

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