年金時代

FOCUS「働き方改革」vol.1

労政審労働条件分科会における議論(第138回・第139回)

平成29年3月に取りまとめられた「働き方改革実行計画」では、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備など、働き方の抜本的改革に関するさまざまな取り組み事項が並んでいる。

FOCUS「働き方改革」では、これらの厚生労働省等で審議されている働き方改革に関する議論を中心にレポートしていく。初回は、8月30日と9月4日の2日間にわたり行われた、労働政策審議会労働条件分科会の模様を紹介する。

 

政府は「高プロ」と「時間外労働の上限規制」の一本化を提案

 

労働政策審議会労働条件分科会(分科会長=荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、8月30日と9月4日の両日、労働政策審議会建議を踏まえた対応について議論を行った。論点は、「働き方改革実行計画」を踏まえて6月5日に出された建議「時間外労働の上限規制等について」と、平成27年2月13日の建議後、同年4月に国会に提出され継続審議となっている建議「今後の労働時間法制等の在り方について」の取り扱いに関することで、政府は2つの建議はどちらも労働時間法制に関する労働基準法改正であることから、一本化した法案を出すべきとの方針を示した。

「今後の労働時間法制等の在り方について」には、長時間労働抑制策や年次有給休暇取得促進策として、「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し」や「一定日数の年次有給休暇の確実な取得」などの改正案とともに、多様で柔軟な働き方を実現する方策として、「企画業務型裁量労働制(裁量労働制)の見直し」や「高度プロフェショナル制度(高プロ)の創設」が盛り込まれている。このうち高プロについては、職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする仕事に就く場合、健康確保措置等を講じること、本人の同意、労使委員会の決議などを要件に、労働時間、休日・深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度で、野党や連合は「残業代ゼロ法案」などと反対してきたものだ。

 

法案一本化に対し、労働者側は反対、使用者側は賛成で議論は平行線

 

政府の法案一本化に対して、労働者代表委員からは反対意見が相次いで出された。その理由としては、裁量労働制の対象業務に新たな類型を追加することについて、みなし労働時間制のもとに長時間労働に対する抑止力が作用せず、長時間労働となるおそれが高まることや、裁量労働制の適用範囲が拡大解釈されるなどに懸念があること。また、高プロについては、労使の合意に基づくことが前提だが、労働組合の組織率が低いことや過半数代表者の選出に不適切なケースが見られることから、対象業務や対象労働者等に関して正しく制度が適用されないのではないか等の懸念を挙げた。こうしたことから、労働基準法の改正案には、裁量労働制と高プロを除いたうえで、「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し」と「一定日数の年次有給休暇の確実な取得」については盛り込むべきとの考えを示した。

一方、使用者代表委員からは、人口減少社会と経済のグローバル化が進展するなかで、裁量労働制の拡大と高プロの創設は、労働者の働き方に対して主体性と柔軟性をもたせ、健康と生産性の向上をもたらすものであるとして、政府の法案一本化について賛成を表すとともに、臨時国会に速やかに提出すべきとの考えを示した。

議論は平行線のまま終わり、荒木分科会長は労働者代表委員の主張する裁量労働制と高プロを除外しての法案一本化は、法案の形式の違いによる反対ではなく、政策論として反対ということであるとの認識を示し、これまでの双方の意見や疑問点を整理したうえで、政府に対して9月8日開催予定の次回の分科会に労働基準法改正案を示すよう求めた。

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