年金時代

第37回日本年金学会を開催ー超高齢・人口減少時代の資産運用・資産形成について議論

日本年金学会は10月26日、27日に総会・研究発表会を開催した。今回は、共通論題に「超高齢・人口減少時代における資産運用・資産形成」を取り上げ、長寿化・人口減少という社会構造の転換期における老後資金確保のあり方に関する研究発表およびシンポジウムを開催した。

長寿化・人口減少社会における老後資金準備のあり方

共通論題「超高齢・人口減少時代における資産運用・資産形成について」の研究発表では、藤本裕三氏(三井住友信託銀行)、杉田健氏(公益財団法人年金シニアライフプラン総合研究機構)、三木隆二郎氏(日本CFA協会)、福山圭一氏(年金シニアプラン総合研究機構)の4氏から報告が行われた。

iDeCoの加入率を高めて、老後所得の不足分に対応

藤本氏は、現在の若齢世代(特に30歳代)の老後所得の確保において、公的年金だけでは不足することをシミュレーションで示し、自助努力による老後資金の準備が必須とした。ただ、遠い将来よりも近い将来を重視しやすいという行動経済学の観点から、自助努力の一つであるiDeCoの加入率を高めるには、英国のNESTや独国のリースター年金のような自動加入制度や補助金制度を導入して普及を図るべきと提案。一方で、離転職時の事務コスト免除や中途引き出しを認めるなどの利便性を高めることも必要とした。また、受給繰下げ制度を現行の70歳から75歳まで認めるよう求めた。

投資助言者の中立性確保に向けた海外の規制動向

杉田氏は、個人の資産運用を取り巻く規制について海外の動向を紹介。特に投資助言者の中立性確保のために各国とも厳しい規制が導入されているとし、たとえば米国の投資マネジャーが負うフィデューシャリーデューティ(受託者責任)には、年金受給者の利益のためだけの義務に加え、忠実義務・注意義務・分散投資義務・規範遵守義務を果たすことが求められていると解説。こうした動向・影響を把握したうえで、先手を打って加入者・受給者が不利にならないしくみを向上させることが必要と結んだ。

超高齢・人口減少社会にあるべき年金運用としてESG課題を考慮すべき

資産運用の世界的な潮流として認知され始めているESG投資(投資の意思決定に環境、社会、ガバナンスの非財務情報を考慮する投資)については、三木氏と福山氏がそれぞれの観点から研究を発表した。三木氏は、PRI(国連責任投資原則)等が日本のESG課題への対応や受託者責任に関する現状と勧告をまとめた「Japan Road Map」を紹介し、特に日本の企業年金に求められているESG課題について論じた。Road Mapでは、日本の企業年金がESG課題をどのように考慮しているか開示を求めているが、三木氏は、現状はESGの理解すら不十分とし、大手企業年金の動向や母体の意向を忖度する傾向から、海外先進国と比べて取り組みが遅れていることを指摘。超高齢・人口減少社会にあるべき年金運用として、受託者のみを考えるだけでなく、年金運用が環境や社会に対する影響、さらには投資先企業のガバナンスに目配りしていくことに重要な意義があると主張した。

福山氏は、ESG投資に関するアンケート調査結果を基に、日本の ESG投資の方向について論じた。公的年金の積立金でESG投資をすることの賛否では積極派が28%、消極派が22%となる一方、「わからない」との回答が5割に上ることや、積立金自体が債券や株式で運用されていることに半数が「知らない」と回答していることを報告。そのうえで、ESG投資のめざすべき方向としては、少子高齢化が進み労働力人口の減少が懸念されるなか、高齢者、女性、若者などの労働促進参加に積極的に取り組むよう投資先企業に働きかけることが重要ではないかと指摘した。

⇒次ページ、超高齢・人口減少社会がもたらす社会経済環境の変化が投資に与える影響

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