年金時代

第37回日本年金学会を開催ー超高齢・人口減少時代の資産運用・資産形成について議論

年金制度の長命化対応や支え手を増やす施策、ESG投資などがカギ

シンポジウムでは共通論題「超高齢・人口減少時代における資産運用・資産形成」をテーマにパネルディスカッションが行われた。モデレーターの藤本健太郎氏(静岡県立大学教授)は今回の共通論題の背景となる社会状況を次のように分析する。

超高齢・人口減少社会の到来

日本の合計特殊出生率は平成元年に戦後最低となり1.57ショックといわれたが、その後も少子化が続き、50年後、総人口は現在の7割程度の8,808万人に減少、高齢化率は38.4%となる。生産年齢人口も2060年には4,793万人に減少し、その極端な減少が経済成長の足かせとなる懸念がある。平均余命は2065年には男性85歳、女性91歳になると見込まれ、公的年金の支出が増大する一方で年金の支え手が急速に減少する。老齢年金の受給期間の延伸は各国の老齢年金の支給開始年齢の引き上げの背景になっている。ドイツが支給開始年齢を67歳に引き上げた際、「平均寿命が延びているので支給開始年齢を引き上げても年金の平均的な受給期間は変わらない、給付を削ったわけではない」と説明した。

金融・資本市場の不確実性の拡大

英国のEU離脱、トランプ政権の誕生など国際政治が予測のつかない動きを見せており、金融市場の不確実性につながっている。また、各国でも通貨を安くして貿易上有利なポジションをとろうと利下げ競争が止まらず、日本に限らず世界的に低金利が続いている。運用効率を上げるにはリスクをとらざるをえないが、個人の老後資産や国の年金資産をリスク資産に投資するのかという問題がある。そこで、企業の業績や運用成績だけを考えるのでなく、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)に配慮する企業に投資していこうというESG投資が注目される。日本ではまだ広まっていないが、超高齢化人口減少時代において、公的年金の積立金運用にはこうした社会の持続可能性を高める投資が重要となってきた。

以上のように、老後期間が長引く一方で、経済成長の停滞、金融資本市場の不確実性の拡大等の環境変化により、従来の資産運用・資産形成のあり方を見直す必要性が高まっている。公的年金、企業年金におけるガバナンス改革やESG投資などの資産運用の体制整備や手法の多様化だけでなく、老後に備えた私的な資産形成も含め、さまざまな角度から新たな時代の老後資産の運用、形成のあり方を議論したいと述べ、パネルディスカッションの導入とした。

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