年金時代

第37回日本年金学会を開催ー超高齢・人口減少時代の資産運用・資産形成について議論

続くパネルディスカッションでは、杉田氏、福山氏、藤本裕三氏、三木氏それぞれから次のような意見が出された。

個人の資産形成では、相場変動を避ける傾向が

杉田氏は、年金制度について、超高齢化により終身年金を廃止する企業が多いなか、立場の弱い年金受給者のために日本にもAARP(全米退職者協会)のような高齢者団体があるといいと述べた。AARPは米国最大のNPOで50歳以上の会員4,000万人を擁する。年齢差別撤廃法案により定年廃止を実現した団体で、投資信託を推薦するなど資産運用に関する情報提供も行う。また、企業年金の過去20年の運用実態を見ると、相場の変動が激しい場合は後追いになると高く買って安く売ることになる。それを防止するにはコンスタントミックスが重要だったと振り返る。なお、個人の資産形成については、満期まで保有すると相場変動に左右されない社債などが売れている実態があり、相場変動を避けたい印象だと述べた。

世界経済の成長発展があれば分散投資効果もあるが、国内だけでは成長は見込みにくい

福山氏は、公的年金の支給開始年齢の引き上げに触れ、日本は世界で最も高齢化が進んでおり、日本以外の各国が65歳よりも支給開始年齢を引き上げている実態があるなか、もう一度、真剣に考えるべきと述べた。加えて、70歳以上への繰下げ支給や加入年齢の引き上げが必要とし、特に国民年金については40年以上加入した分の給付をより充実させることが大切という。また、少子化対策として、子どもをもつ世帯への所得支援を年金制度のなかで考えていくことも必要と示唆した。運用については、2ケタのマイナス利回りもありうる変動が激しい環境では、単年度でなく長期的にどうリターンをねらっていくのかが問題とし、世界経済の成長発展があれば分散投資が有効としながらも、人口減少でマーケットが年々縮小する日本のなかだけで安定的な成長を求めるのは難しいと述べた。

資産形成では、若年時からの積立投資も有効

藤本氏は、人口ピラミッドを見ると第一次・第二次ベビーブーマーの2つの大きなコブがあるが、この人口のコブにも現在のマクロ経済スライドの枠組みで耐えられると明言したうえで、超高齢人口減少時代においても公的年金は賦課方式によらざるをえないとし、支え手を増やす施策として、第一に子どもを増やす、第二に女性の就労、第三に就労期間の延長とそのための健康管理を挙げた。年金は100年を目途に財政検証するため時間もあり、積立金もある。その間に支え手を増やす政策をどう打っていけるかだと主張。なお、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株を大量に保有することに対するアレルギーはあるが、ESG投資を前面に押し出せばかなり和らぐと述べ、個人に関しては、マーケットはいいときも悪いときもあることやドルコスト平均法を若い人に勉強してもらう機会があるといいと結んだ。

資産の下落を避けたい企業年金にとってESG投資は有効

三木氏は、まずESG投資に対する国民の理解を促進することだと述べ、全国労働金庫企業年金基金の取り組みを紹介した。同基金は労組の働きかけにより、5年がかりで資産運用の基本方針にESG投資を重視する旨を盛り込むことができた貴重な事例。ESG投資の理念を基金として代議員会を通じて共有していく課程で、ESGに対する加入員の理解が深まっていくという。また、企業年金はドローダウンを避けることが大事とし、ESGはドローダウンを避けることに役立つと述べた。このほか、DCの投資教育の好事例として、人事教育および健康教育と統合したかたちの研修プログラムを紹介した。

⇒次ページ、このほかにも拠出建て制度における受託者責任のあり方で論点提示

年金時代