年金時代

法律で読む平成30年度の年金額

著者の大山均(おおやま ひとし)氏。
例年、1月第4週の金曜日には、総務省から前年の年平均の消費者物価指数が公表される。この前年の消費者物価指数の公表を待って、次年度の年金額が厚生労働省のホームページで公表されることになっている。
1月26日の厚生労働省のPress Releaseによると、「平成30年度の年金額は、法律の規定により、平成29年度から据え置きとなります」ということである。
ここでは、平成30年度の年金額が平成29年度から据え置きとなった根拠について、法律を手がかりに読み解いてみたい。

基本となる数値の確認

厚生労働省のPress Releaseで示された年金額算出のための基本数値は、次のようになっている。

まず、「平成30年度の参考指標」として、物価変動率0.5%の上昇、名目手取り賃金変動率0.4%の下落、マクロ経済スライドによるスライド調整率0.3%の下落が挙げられている。

このうち、名目手取り賃金変動率については、0.4%下落の算出根拠として、物価変動率(平成29年の年平均)0.5%の上昇と実質賃金変動率(平成26年度から平成28年度までの平均)0.7%の下落と可処分所得割合変化率(平成27年度)0.2%の下落によるものとされている。これを数式で整理すると、

(物価変動率)1.005×(実質賃金変動率)0.993×(可処分所得割合変化率)0.998≒0.996

となる。

また、マクロ経済スライドによるスライド調整率については、0.3%の下落の算出根拠について、公的年金被保険者数の変動率(平成26年度から平成28年度までの平均)0.0%と平均余命の伸び率0.3%の下落によるものとされている。これも数式で整理すると、

(公的年金被保険者数の変動率)1.000×(平均余命の伸び率)0.997=0.997

となる。

これらの基本数値から、厚生労働省のPress Releaseでは、「年金額の改定については、法律上、賃金水準の変動がマイナスで物価水準の変動がプラスとなる場合には、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、受給中の年金額(既裁定年金)ともにスライドなしとすることが規定されています。」と述べられている。

確かに、物価は平成29年は0.5%上昇しており、賃金(名目手取り賃金変動率)は0.4%下落しているので、賃金水準の変動がマイナスで物価水準の変動がプラスとなっている。では、このような場合、年金額の改定がスライドなしとなる規定はどこにあるのだろうか。

次ページ:なぜ国民年金の年金額が据え置きとなるのか

ここから先はログインしてご覧ください。

年金時代