年金時代

FOCUS「働き方改革」vol.11

通常国会召集 安倍首相が施政方針演説で「働き方改革」断行を宣言

第196回通常国会が1月22日召集され、衆参両院本会議で安倍晋三首相が施政方針演説を行った。これを受けて24日、25日、26日には各党の代表質問が行われ、働き方改革を巡る論戦の火ぶたが切られた。働き方改革関連法案の国会提出は2月下旬を予定。会期は6月20日までの150日間となる。

安倍首相・施政方針演説――少子高齢化の「国難」を「働き方改革」で克服

1月22日、衆参両院本会議で施政方針演説を行った安倍首相は、日本は少子高齢化という「国難」とも呼ぶべき危機に直面としているが、あらゆる日本人にチャンスを作ることで克服できる、と訴えた。その政策が、誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革する「働き方改革」で、こうした労働制度の改革は、労働基準法制定以来の70年ぶりの大改革だ、と述べた。

また、首相は、雇用形態による不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」を実現するとして、「非正規」という言葉を一掃する、と明言。罰則付きの時間外労働の限度を設ける一方、専門性の高い仕事では、時間によらず成果で評価する制度を選択できるようにする、と「働き方改革」の中身を説明した。

さらに、テレワークや週三日勤務の導入で優秀な人材を集めているベンチャー企業の成功例を紹介。働き方改革を社会政策にとどまらず、成長戦略そのものと位置づけ、「ワーク・ライフ・バランスを確保することで、誰もが生きがいを感じて、その能力を思う存分発揮すれば、少子高齢化も克服できるはず」だと結んだ。

衆院本会議の代表質問――枝野幸男氏(立憲民主党・市民クラブ)、玉木雄一郎氏(希望の党・無所属クラブ)、志位和夫氏(日本共産党)の質疑に対する答弁

1月24日、衆院本会議で施政方針演説などについて各党が代表質問を行った。

枝野幸男氏(立憲民主党・市民クラブ)は、8つの法案を束ねた働き方改革法案のなかには、裁量労働制の拡大や、高度プロフェッショナル制度の導入という「残業代ゼロ法案」が含まれているとして、裁量労働制の拡大は時間外労働の上限規制などの他の部分とは切り離して議論すべきだ、と主張した。また、労働基準監督署の人員不足と体制強化策についてどう考えるか、加藤勝信厚生労働大臣に答弁を求めた。これに対し、加藤厚労大臣は、来年度よりすべての労働基準監督署に特別チームを編成し、長時間労働是正のための監督指導の徹底、中小企業等に対するきめ細かな支援を効果的に推進する、と答弁した。

また、同一労働同一賃金の制度が機能するには証拠を挙げる挙証制度を使用者側に持たせることが不可欠だ、とする枝野氏の出張について、加藤厚労大臣は、使用者に待遇差の内容および理由について説明義務を課すとともに、待遇差について説明を求められたことを理由とする不利益扱いを禁止する法案を国会に提出する、と答弁した。

枝野氏は、安倍首相には教員の長時間労働についての認識と改善策について質した。安倍首相は、教員の業務負担の軽減を図ることは喫緊の課題だとして、適正な勤務時間管理の実施、業務の効率化、学校の指導、事務体制の効率的な強化などについて緊急対策を取りまとめ、平成30年度予算案に盛り込んだ、と応じた。

玉木雄一郎氏(希望の党・無所属クラブ)は、高度プロフェッショナル制度の導入や裁量労働制の拡大について法案からの分離・削除が審議入りに前提だと主張。これに対して、安倍首相は、高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の見直し、時間外労働の上限規制は、いずれも健康を確保しつつ、誰もがその能力を発揮できる柔軟な労働制度へと改革するもので、一つの法案とするのが適当だ、と答弁した。

1月25日の衆院本会議では、志位和夫氏(日本共産党)が質問に立った。志位氏は、高度プロフェッショナル制度は残業代ゼロ法案であり、働く人の立場に立った改革ではなく、働かせる側の立場に立った制度だと批判。残業時間の上限規制にも問題があるとして、残業は週15時間、月45時間、年360時間までとして、終業から翌日の始業まで最低11時間あけるインターバルを確保すべきだ、と主張した。

志位氏の質問に対して安倍首相は、高度プロフェッショナル制度は働く人の健康を確保しつつ、働く人の意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするもので、残業代ゼロ制度との批判は当たらない、と反論。残業時間の上限規制については、罰則付きの時間外労働の限度を設け、月45時間かつ年360時間と法律に明記したうえで、労使が合意した場合でも上回ることができない上限として年720時間とし、その範囲内において複数月の平均で80時間以内、単月で100時間未満に定める、と説明。残業規制については、罰則付きの時間外労働の限度を設け、さらに勤務間インターバル制度の普及にも努める、と述べ、法案を早期に提出し、成立に全力を傾注する、と決意を示した。

参院本会議の代表質問――大塚耕平氏(民進党・新緑風会)、吉田博美氏(自由民主党・こころ)の質疑に対する答弁

1月25日、26日には、参院本会議において代表質問が行われた。

25日の参院本会議において、大塚耕平氏(民進党・新緑風会)は、あらためて、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の対象業務拡大を働き方改革法案からの削除を求めたうえで、「同一労働同一賃金」の実現に向けて、非正規雇用労働者が収集できる情報として、使用者に情報開示の義務を課す項目を確認。安倍首相は、基本給、賞与のみならずすべての待遇差だとして、情報開示する具体的な内容を検討していくと答えた。

非正規労働者が待遇格差の内容や理由を事業主に説明を求めた場合、不利益な取扱いをされないようどのような対策を講じるのか、また、罰則規定がない事業主の説明義務違反に対して、現行法に基づく助言、指導で実効性が保てるのか、という大塚氏の質問に対しては、事業主が不利益な取扱いをしたり、説明をしなかったりする場合は、都道府県労働局が指導、勧告等を行う、と答えた。

吉田博美氏(自由民主党・こころ)は、働き方改革における中小企業・小規模企業事業者への配慮について聞いた。これに対して、安倍首相は、全国47都道府県に働き方改革推進支援センターを設置して、中小企業・小規模企業事業者の個別相談に当たるとともに、労働基準監督署にも相談に対応する特別チームを編成する、と答弁した。

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