年金時代

公的年金 マクロ経済スライドが完全に発動されたと仮定した給付水準を試算

会計検査院は11月9日、「平成29年度決算検査報告」を内閣に送付し、その概要を公表した。そのなかで、マクロ経済スライドが導入された平成16年度から毎年度完全に発動されたと仮定して年金給付水準の試算を行ったところ、平成28年度の給付水準が実際の給付水準よりも5.0ポイント低い試算結果となり、これに基づく基礎年金国庫負担分相当額と実際の額の差額は平成28年度までの累計で3.3兆円となった。

マクロ経済スライドは、将来世代の負担が重くなりすぎることを避け、高齢期の生活を支えられる年金の給付水準を確保していくための措置として平成16年改正で導入された。保険料の引き上げをできるだけ抑制するとともに、将来の負担に上限を設けて固定し、その範囲内で少子化等の社会経済の変動に応じて給付水準を自動的に調整するしくみで、具体的には毎年度の年金額の改定率から少子化による被保険者数の減少分と平均余命の伸び率である調整率を差し引いて調整を行う。マクロ経済スライドによる給付調整は、最終的な負担の範囲内で年金財政が安定する見通しが立つまで行われることとなっていたが、賃金や物価の伸びが小さく、調整率を反映すると前年度よりも年金額が下がる場合は年金額が維持されるなどの措置が設けられている。そのため、賃金や物価の伸びが下がるデフレ化ではマクロ経済スライドが発動されず、平成27年度に初めて調整が行われた以外は発動されていない。また、平成30年4月以降は、未調整分を翌年度以降に繰り越し、賃金や物価の伸び率が大幅に上がったときに未調整分をまとめて調整するキャリーオーバー制度を導入している。

決算検査報告では、「マクロ経済スライドによる給付水準の調整は、継続して実施されていれば、年金財政に一定の影響を与えていたものであり、保険料水準が固定されている現行の年金財政制度の下では、キャリーオーバーを含め、マクロ経済スライドによる給付水準の調整が適切に行われることが、将来世代の給付水準の確保に必要であるとともに、年金財政にとって重要であると考えられる」と指摘している。

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