年金時代

公的年金 長期の運用利回りの設定にはGPIFの実績を活用する方針を示す

厚生労働省の年金財政における経済前提に関する専門委員会(委員長=植田和男・共立女子大学教授・東京大学金融教育研究センター長)は11月26日、検討作業班から経済モデルの建て方とパラメータの設定や運用利回りの設定などについて報告を受けた。同専門委員会では、平成31年の財政検証に用いる経済前提等について昨年7月から検討を進めているが、より技術的な検討や具体的な作業を行うため、同専門委員会の下に検討作業班を今年の7月に設置し、これまで3回の審議を行ってきた。この日は、検討作業班座長の玉木伸介・大妻女子大学短期大学部教授が、検討作業班での議論について専門委員会に報告した。

検討作業班は、経済モデルの建て方とパラメータの設定の基本的な考え方として将来の人口や社会・経済状況はさまざまに変化しうるものであり、将来に対する不確実性という観点から、財政検証は幅広く複数ケースの前提を設定すべきとした。また、財政検証は100年にわたる超長期の将来見通しを作成することから、その長期の前提は長期間の平均値として設定することを基本とすべきとして、さらに、財政検証の前提となる経済モデルの建て方とパラメータの設定については2014年財政検証の方法を検討したところ、今回の財政検証でもその枠組みはおおむね妥当と判断した。

運用利回りについては、前回までの財政検証では長期金利の将来推計に内外の株式等による分散投資による効果を上積みする方法で設定していたが、近年の長期金利は中央銀行の政策の影響が大きく、その影響の評価も困難であることから、長期金利の長期的見通しが不透明であるとした。一方で、年金積立金の市場運用を開始して17年以上が経過し、運用利回りを活用する環境が整ったといえることから、今回からGPIFの運用利回りの実績を活用することが適切との見解を示した。ただ、運用実績はGPIFの運用目標や基本ポートフォリオに依存する一方で、GPIFの運用目標は財政検証の経済前提に基づいて設定されている。そのため、運用利回りが高くなり運用実績に反映した場合、運用目標も高くなってしまうといったループが生じる可能性があることから、運用実績を活用するにあたっては保守的な設定とすることが望ましいとした。委員からは「保守的な設定にするのは賛成だが、どのように保守的にするのか詰めていく必要がある」といった意見が出た。玉木座長は「保守的というのは、まず過去の実績を活用する際に低い水準を採用するという意味がある。また、GPIFの過去17年間の実績のなかにはインフレ期が入っていないが、将来は予測できないため今後インフレ期に入る可能性もないわけではない。そのため、保守的という言葉には過去の実績自体が確固たるものではないという意味もある」との考えを示した。

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