年金時代

[ねんきん最前線 市区町村 VOICE]神奈川県横浜市 健康福祉局生活福祉部保険年金課国民年金係

全国一人口が多い都市・横浜市は広報事業と
職員研修に力を入れる本年最大の業務課題は今年10月施行の
年金生活者支援給付金事務専任職制度による人材育成や
市民サービス向上に向けて取り組む

横浜市役所
2002 年、国民年金保険料の収納事務が国へ移管されたのに伴い、市区町村には事務の効率化が求められ、人事面においては、正規職員の削減、非常勤職員の活用等が進められた。
横浜市は20 年以上前から専任職制度を設け、年金業務のスペシャリストが市民サービスの向上に貢献しつつ、市職員の人材育成にも励む。横浜市の国民年金事業について、健康福祉局生活福祉部保険年金課国民年金係の外山伊知郎係長と専任職の安室専任職にお話を聞いた。

 

横浜市のデータ〇人口: 3,733,084人 *2018年1月1日現在

〇第1号被保険者数: 433,445人(うち任意加入被保険者8,169人) *2018年3月31日現在

〇保険料免除者数: 156,815人(うち法定免除35,847人、申請免除120,968人<うち全額免除40,187人、一部免除8,911人、納付猶予13,671人、学生納付特例58,199人>) *2018年3月31日

〇国民年金受給者:老齢基礎年金817,311人、障害基礎年金45,890人、遺族基礎年金5,056人 *2018年3月31日現在

〇国民年金担当者数:本庁4人(年金係長1人、専任職1人、正規担当職員2人)、区役所76人(係長18人、専任職1人、正規担当職員42人、再任用職員12人、非常勤嘱託職員21人) *2018年12月末日現在  ※他に保険年金課長(国保兼任)が本庁に1人

32頁の国民年金パンフレットを独自に作成 市の広報誌には年間計画に基づき年金情報を掲載

――国民年金事務の観点から見て、横浜市はどんな特徴がある市区町村だと言えるのでしょうか。

外山係長 横浜市は18の行政区からなる政令指定都市の一つで、日本の市区町村で最も人口が多い都市です。そうしたことから、国民年金事務の対象となる第1号被保険者数も市区町村で全国最大級です。区役所の年金窓口には年間約30万人程の市民が手続や相談に訪れます。

――全国一の第1号被保険者数を抱えているとのことですが、国民年金事業においては、どのような取り組みに力を入れているのでしょうか。

安室専任職 幅広く多くの市民に年金制度のことをご理解いただくことが大切なので、広報事業には特に力を入れています。『こくみんねんきん』は、A4サイズで32頁と、結構ボリュームがあるパンフレットで、市が独自に年2回、6月と10月に発行しています。毎回、冒頭見開きページで、制度改正のポイントを掲載しておりますが、2018年度10月版では、①2018年度の第1号被保険者の保険料は1ヵ月16,340円、②2019年4月から国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除制度が始まります、③2019年10月から年金生活者支援給付金の支給、④マイナンバー(個人番号)による届出も可能になりました――の4点について、説明しています。このパンフレットは、区役所の窓口にいらした市民にお渡ししたり、職員研修の機会等に活用しています。
また、毎年4月に保険料が新しく改定されるので、A4サイズ1枚もののリーフレットを作成して、3月および4月に来庁される市民に窓口でお配りして案内しています。
そのほか、横浜市には月1回、自治会や町内会等を通じて各世帯に配布している市の広報誌『広報よこはま』があります。そこにも年金についての記事を掲載しています。2018年12月号には「クレジット納付」、2019年2月号「口座前納期限」を掲載しました。今後の掲載については、「産前・産後保険料免除」、「学生納付特例」、「保険料免除、納付猶予」等を予定しています。

『こくみんねんきん2018 年度版横浜市』の表紙

年金生活者支援給付金の区役所向け説明会は日本年金機構から情報収集のうえ2月に開催

――国民年金事業にとって、今年の課題は何でしょうか。

外山係長 現在、最も大きな事業課題と言えば、今年10月施行の年金生活者支援給付金(図1)の支給に係る事務の円滑かつ確実な実施ということになりますね。これは法定受託事務として市区町村が行うことになっています。

――横浜市では給付金の対象者はどのくらいいるのでしょうか。

外山係長 老齢年金生活者支援給付金を22万人程見込んでいます。そのほか障害年金生活者支援給付金の対象者が約4万人5千人、遺族年金生活者支援給付金が5千人弱の見込みです。
安室専任職 2019年4月2日以降に新規の基礎年金受給者になる方には、年金の新規裁定請求に併せて、給付金の請求書を4月から年金事務所または市区町村に提出していただくことになっています。また、今年4月1日時点の基礎年金受給者で一定の要件を満たす方には9月以降、ターンアラウンドの給付金の請求書が機構から送られることになるので、そのあたりからお問い合わせのピークになるのではないかと見込んでいます。

現時点で、給付金の支給業務についての情報がなかなか国や日本年金機構から下りてこないので苦慮しています。市役所庁舎のすぐそばにある横浜中年金事務所が横浜市内の代表事務所ですが、事務所にお聞きしても、まだ機構本部からきちんと説明がなされていないようで、市区町村よりも情報の収集が遅れているのではないかと感じています。給付金については市区町村から国に700件ほどの疑義照会が行われたとされていますが、それに国がまだ応えきれていないものもたくさんあることから、機構本部にしても、依然として国から十分な説明を受けていないのではないかと考えています。
そうは言っても、市としては給付金の支給事務に万全を期していかなければなりませんので、給付金の窓口を担う18区役所の係長会において、昨年11月から毎月、給付金について説明を行っています。そこでは国が作成した資料だけでは理解が深まらないため、独自に市でも資料を作成しました。また、国が構築したスキームが実務的な観点から区が行う事務に馴染むよう様々な工夫を施しました。2019年2月には18区役所の職員に対して実務説明会を行いましたが、そこでは、事前に機構本部に確認したい事項を区から集約して、横浜中年金事務所を通じて機構本部に確認していただくようお願いしました。そこで得られた情報についても区の職員と共有するとともに、給付金の支給事務の詳細を説明し、理解の促進と円滑な事務執行に繋げていきたいと考えています。

――そのほか、国民年金事業における取り組み課題は何でしょうか。

外山係長 2019年4 月からは国民年金第1号被保険者の産前産後の保険料免除制度が始まります。また、マイナンバー(個人番号)による届出も2018年3月5日から可能となり、マイナンバーによる年金関係の手続にもしっかり対応していかなければなりません。いまのところ横浜市は、マイナンバーの届書への記入があまり普及していない状況ですが、今後、健康保険証として一体化するということなどを国は考えているため今後、制度の熟度が増すと、マイナンバーで年金の手続等を行うケースも増えてくるのではないかと考えています。
また、2019年4月からは入管法の改正で外国人の転入も増えることが予想されます。新聞報道によると、介護、建設、農業など人手不足が深刻な分野で重点的に外国人労働者を活用するとのことですが、その場合、働くのか学生なのかどうか、判別しにくいようなケースや、社会保険の適用がされない場合、国民年金や国民健康保険に流れてくる可能性もあります。横浜市のなかでも外国人が多い区もあればそうでない区もあり、まちまちですが、外国人の多い区では、3、4月には転出入も多く、大勢の外国人が手続に来庁します。そのような事態に円滑な対応を進めるため、外国語に対応した音声翻訳機の導入等も検討しているところです。

日本年金機構とは年3回、市内5つの年金事務所と会議ウインドウマシン導入は個人情報保護の観点から慎重に対応

 ――日本年金機構との連携ということではどのように取り組まれていますか。

外山係長 「5年金事務所会議」というのがあるのですが、横浜市にある5つの年金事務所(港北・鶴見・横浜中・横浜西・横浜南)と、年3回、横浜市健康福祉局とが会合の場を持っています。2月に開催された同会議では、18区役所から出されていた年金生活者支援給付金についての問い合わせ内容を一覧にしてお示ししました。もちろん、その場で年金事務所から回答が得られるわけではありませんが、情報の共有を図る意味で、同会議のテーマの一つにさせていただいたところです。

――2019年12月に市町村向けねんきんネットが廃止(予定)されるにあたり、ウインドウマシンの導入についてはどうお考 えですか。

安室専任職 年金相談等の際に、従来、区役所ではねんきんネットを利用していましたが、2019年12月には、市区町村ではねんきんネットが利用できなくなるとのことです。それに代わるものとしてウインドウマシンを活用するかどうか現在検討しているところです。実際に区職員にウインドウマシンを見学してもらい、2019年2月末までにウインドウマシン導入についての意見書を提出してもらいました。それをもとに3月開催予定の18区係長会において、横浜市としてどう対応するか方針を決めていくことにしています。
ねんきんネットとウインドウマシンとでは現場での運用方法が違います。ウインドウマシンは基本的にお客様が窓口にいらしたときにお客様の同意をいただいたうえで操作するなど、個人情報についてのより厳格な取り扱いが求められます。そうしたことも導入するかしないかを判断する際のポイントとなろうかと思います。
外山係長 また、ウインドウマシンでは国民年金事務には直接必要ない厚生年金などの加入記録の情報も検索ができます。業務範囲を超える、個人情報を見ることができてしまうことにも注意が必要です。いずれにしても、個人情報の取り扱いには市としても法令を遵守し、厳格に対応していかなければなりません。

細分化された大都市の行政サービスを担うスペシャリストに20年以上前に専任職制度を導入するも年金では現在3名

 ――国民年金の事務が法定受託事務となってから、国民年金事務については人員削減がなされたのではないでしょうか。

安室専任職 収納業務を国に戻したのが2002年でしたが、それ以降、人員が大幅に減りまして、少規模区だと係長、職員及び嘱託員を含め5名体制で国民年金の事務に当たっている区が多くあります。そうしますと、人事異動の際には、日常的な窓口運営や継続的な人材育成を進めるうえで、とても厳しいものがあります。

 ――国民年金事務を市民サービスの向上を図りながらも、効率的に対応していくため、人事面で何か有効な手立てを打っているのでしょうか。

安室専任職 横浜市には専任職制度があります。私は今年度から国民年金業務担当の専任職になりましたが、職員Ⅲの職にあり年金の業務を5年間以上経験し昇任選考に合格する必要があります。年金のほか、健康保険、戸籍などの業務において、専任職制度があるのですが、健康保険については各区に専任職が1名程度配置されているのに対して、年金の専任職は少なく、現在は3名です。内訳は、私が市役所の国民年金係にいるほか、もう1名は国に出向、もう1名は区役所に配置されています。
専任職については、専門的な知識や経験をもとに日々の国民年金の事務に当たっていくとともに、人材育成も大きな役割としてあります。特に年金業務は専任職が少ないので、人材育成が急務の課題です。
このため、研修には、かなり力を入れています。4月の異動時に新たに国民年金係に配属された職員を対象とした初任者研修では専任職が中心となって講師を務めています。また、この他に、経験年数で分けて、初任者向けのフォローアップ研修と中・上級者向けのスキルアップ研修を行っております。
フォローアップ研修では、まず研修の企画・運営協力者を区職員の中から募集します。そして、専任職と企画・運営協力者が一緒に研修のテーマ決めや資料作成などを行います。当日は、事例に基づくグループワークにより、参加者全員で、業務対応や解決策等を考えるよう研修に取り組んでいます。昨年11月に実施したフォローアップ研修では、「申請免除における所得判定の計算方法」「死亡に関する届出」「障害基礎年金」の3つをテーマとしました。
一方、中・上級者向けのスキルアップ研修では、年金制度に精通する外部講師に依頼して、講演会を実施しました。2018年度は「年金が辿った道と今後の展開」を演題に、①国民年金の沿革(地方分権、2000~2002年における国民年金事務の見直し等)、②マクロ経済スライドの改定ルール、③年金制度の改正の方向性(高齢期の多様は年金受給の在り方など)――についてお話ししていただきました。ちなみに2017年度は受給資格期間短縮をテーマとしました。来年度は、例えば外国人の年金制度の取り扱いなど、なるべく旬のテーマで研修を実施できたらと考えています。

 ――年金はやはり専門的な知識が求められますので、事務対応に慣れたころに他部署へ異動があったりすると、事務が回らなくなってしまいますね。

 安室専任職 そうですね、本来は各区に1人、専任職がほしいところです。ほかの市区町村に聞いても、専任職制度を採用しているところはあまり聞きません。この前も湾岸5市会議(横浜市のほか、千葉市、さいたま市、川崎市、相模原市で構成)という、 近隣5市が年2回集まって情報共有する会議があるのですが、どこの市からも結構、人材の確保が大変だと聞いています。

 ――横浜市の専任職制度はどのような制度ですか。

 外山係長 専任職制度は、いわゆる係長、課長と昇任していくコースとは別にスペシャリストを育てていく人事制度で、スペシャリストには全庁的な視点を持って人材育成や課題解決等に取り組むことが役割で、いわゆる昇任の複線化ということで導入された制度です。
特に横浜市は大都市なので一人ひとりが担当する分野が細分化されていることから、部署を異動してしまうと身に付けたスキルが役に立たないということにもなってしまいます。その意味では業務を少ない人数で回していくと、どうしても人材育成して、伝えて行かなければいけない、技術の伝承ということが必要になってきたことから、この制度を導入しました。

 ――専任職制度は国民年金事業を支えるうえでも効果的な人事制度となっているようですね。

 外山係長 年金はなかなか複雑な制度で、過去の経緯もわからないといけませんし、その一方で、オールマイティーに全分野を把握するのも難しいため、年金制度において、専任職は欠かせない存在です。
安室専任職 私が年金業務に携わった平成24年度以降も、「保険料免除の2年遡及」「被用者年金制度の一元化」「受給資格期間10年短縮」などの大きな制度改正がありましたが、今後も、マイナンバーを活用した情報連携や年金生活者支援給付金の実施などを控えております。引き続き、日本年金機構との連携・協力、他都市との協力を深めるなど、本庁と区役所係が一丸となって取り組んでいきたいです。

 ――年金制度に情熱とスキルを持った職員が横浜市の国民年金制度を支えているというわけですね。今日は取材にご協力いただき、ありがとうございました。

 中央が原田正俊保険年金課長、右が外山伊知郎国民年金係長、左が安室専任職。
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