年金時代

公的年金 日本年金機構の再生プロジェクトを総括

日本年金機構再生本部アドバイザリーボードは4月24日、日本年金機構の再生プロジェクトを総括した。平成27年に機構が保有する個人情報約125万件が流出した不正アクセス事案を受け、厚生労働大臣からの業務改善命令が発せられ、業務改善計画の策定と提出が求められていた。機構では、水島藤一郎理事長を本部長とした日本年金機構再生本部を設置。3年間の再生プロジェクトを策定し、集中的に取り組んできた。アドバイザリーボードは再生本部内に設けられ、外部の有識者が助言を行ってきた。この日は3年間に及ぶ機構の取り組みについて総括が行われたほか、2019年度からの第3期中期計画の基本方針である「未来づくり計画」策定に向けて検討すべき項目などが示された。

再生プロジェクトでは、組織改革、業務改革、人事改革、情報開示・共有の推進に取り組んできた(図表参照)。アドバイザーからは、3年間の取り組みや成果を評価する意見が複数出されたほか、再生プロジェクトを最低限できていなければいけないミニマムスタンダードと位置づけ、これからの未来づくり計画は年金実務を安全かつ効率的に果たせるようなベストプラクティスにしていくべきといった指摘があった。水島本部長は「いただいた意見を未来づくり計画の中に継承していきたい」と述べ、「私は『制度を実務に』という言葉をよく使うが、本部は制度を知っていても実務を知らない、現場は実務を知っていても制度を知らないというギャップがある。再生プロジェクトで行ってきたことはこのギャップを埋め、もう一度実務機関として機構をつくり直すこと。まだまだ不十分な点もあるため、粘り強くきっちり仕上げていく。こうした取り組みが続くようなしくみづくりが必要だ」と締めくくった。

改革の目的
主な取り組み
組織改革
・現場を向いた本部づくり
・地方分散型の組織を全国集約型・一体型組織へ再編
・合意の形成と情報共有(常勤役員会を毎週開催、H31.3末時点:合計161回)
・本部の制度別組織を改め現場への支援体制を強化するため、「事業企画部門」と「事業推進部門」の横断的体制を確立
・年金事務所等を横断的かつ一元的に管理する体制を確立するため、現場との接点となる事業推進部門に15地域部を設置
・経営資源管理機能(人事・経理・予算・情報)の統合(ブロック本部職員の糾合)
・人事権の本部一元化(本部・拠点間異動経験者、H30.10時点:23.7%)
・ブロック本部の統合および業務量調査の実施結果を踏まえ、正規312人、非正規256人を年金事務所および事務センターへシフトし現場を強化
・本部の現場力強化(本庁2割、地方5割、民間2割、新卒1割で本部を構成)
業務改革
・機能・組織の集約による効率化、人材育成と専門性の強化
・事務・システムの効率化、人事配分の適正化
・チャネルの見直しをはじめとしたお客さまサービスの向上
・マニュアル整備をはじめとしたルールの統一・徹底
・障害年金センターの設置(障害認定業務の集約)と全国一体的な執行体制を確立
・中央年金センターの設置(本部現業業務の集約)
・年金事務所の機能集約(厚年適用・徴収業務の集約)(14拠点)
・事務センター広域集約(厚年・国年等の事務の集約)(39→16)
・業務削減会議の設置
・業務量調査の実施(各拠点の適正人員の配置および業務区分の明確化)
・年金相談予約の全国拡充(H28.10~全国実施)
*予約率:H28.7~9の平均7.2%→H31.3末87.0%
・年金事務所分室の設置(千葉県成田市、埼玉県加須市)
・テレビ電話相談の試行実施(新潟県佐渡市)
・マルチランゲージ(多言語通訳)サービスの実施
・ねんきんネットの機能拡充(年金振込通知書等の再交付機能の追加)
・指示発出件数の5割削減
・複数に分かれたマニュアルを一元化し、統一業務マニュアルを策定(325種類)
・統一業務マニュアルをweb形式化した業務処理要領確認システム(MACS)の運用開始
・ルール徹底担当者を設置
・理解度チェックの実施
人事改革
・現場重点主義に基づく人事制度の抜本改革による三層構造の完全な排除
・職員の希望とやりがいを高め、組織をより活性化するための人事評価等諸制度の見直し
・拠点のG級ポストを拡大(G級ポスト数を0→8(H29.4~)に拡大)
*G級:ゼネラルマネージャー職群
・拠点長の資格の引き上げ(M3級以上ポスト数9(H27.10)→39(H31.4))
・役員体制の強化(「制度」「実務」「サービス」のバランスを踏まえた体制)
・若手管理職の登用実施(30歳代11名(H27.4)→36名(H31.4))
・課長代理の配置(課長代理742名(H31.4))
・女性管理職比率の拡大(11.2%(H27.4)→13.7%(H31.4))
・職員の人事評価分布の見直し(信賞必罰の観点で、メリハリのついた評価分布に見直し)
・降格基準の見直しの実施(D評価の厳格化)
・年金給付分野およびシステム分野の専門職制度導入
*上席専門職:計80名、専門職:計269名(H30.4時点)
・新入構員現場研修(新ジョブローテーション)の実施
*集合研修および主要業務を各1ヵ月ごとにローテーション
・無期転換職員・有期雇用職員への賞与支給
・キャリアデザイン研修の実施
情報開示・共有
・情報開示の促進による透明性の確保
・本部・拠点間の情報共有体制の緊密化による相互信頼の醸成
・情報開示担当理事および担当部署の設置、情報開示規程の整備
・地域部内に本部と拠点間の情報共有のキーマンとなる事業推進役(地域マネージャー)を15名配置(H28~30年度:延べ約6,000拠点訪問)
・すべての拠点にテレビ会議システムを導入し、本部拠点間や現場同士の情報共有を促進
・テレビ会議システムを利用した指示解説の実施(H30年度:200回開催)
・報道発表事項等の即日伝達の実施
・年金局と機構幹部による定例連絡会議の開催(隔週開催)
・年金局職員と機構職員の相互の人事交流の拡大
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