年金時代

企業年金 年金数理人会創立30周年記念行事講演会・シンポジウム(要旨)

公益社団法人日本年金数理人会(小川伊知郎理事長)は、今年4月に創立30周年を迎えた。その記念行事の一環として5月27日・28日の両日にわたり、講演会・シンポジウムを開催した。ここでは、それぞれの要旨を紹介する。

生涯現役社会のための働き方改革と社会保障制度改革

清家 篤(日本私立学校振興・共済事業団理事長/慶應義塾学事顧問)

日本では世界に類を見ない早さで高齢化が進み、団塊世代が75歳以上となる2025年には65歳~74歳と75歳以上の人口比率が1:1.5になり、社会保障給付費は2012年度比で1.36倍になる。一方、少子化により労働力人口が減少し制度の支え手が減ることで、団塊ジュニア世代が高齢者となったとき貧しい状態に陥る可能性がある。労働力の減少を食い止めるためにも労働可能な人口を増やしていくことが必要だ。

厚労省のシナリオでは、労働力人口が2040年時点で2017年より1,300万人程度減少するのを、500万人程度にまで抑えれば制度が維持できると見ている。そのためには、まず女性の就労率向上が必要で、子育て支援が必須となる。OECD諸国でも就業率と出生率は正の相関を示しており、国、企業ともに保育サービスの拡充や仕事と子育ての両立支援に取り組むべきである。もう一つは高齢者の就労率の向上で、日本の高齢者はOECD諸国のなかでも比較的高い就労意欲と能力を持っているとの調査結果もある。ただし、定年退職制度、年功賃金制度、能力開発制度の変革が必要だ。厚生年金の支給開始年齢との整合性を持たせる理由からも、少なくとも2025年度までに定年年齢を65歳に義務づける必要がある。同時に年功賃金制度をそれに見合った形に見直す。さらに、新しい技術やビジネスにも対応する必要も出てくることから、将来にわたって能力開発を行うことも重要である。

一方、社会保障制度の改革では、年金・医療・介護に加え子育て支援が重要だ。子育て支援は保険制度ではないため常に財源の問題があったが、消費税引き上げによる社会保障・税一体改革により財源が確保できた。また、高齢化で医療・介護の需要が高まるなか、地域医療連携の強化によって効果的かつ効率的な医療サービスが提供されるしくみを整えた。さらに、すべての世代が活性化するためには、第一に子育て支援の充実によって若年世代に元気になってもらう必要がある。第二に介護サービスの拡充だ。要介護者の福利厚生のためだけでなく、介護離職を回避して労働者、企業、社会全体のマイナスをなくす必要がある。第三に高齢者の就労促進である。そのために必要なことは健康寿命の延伸のために予防医療に力を入れることで、さらには、就労意欲を阻害する在職老齢年金の見直しや、支給開始年齢のあり方も検討の視野に入れるべきである。

現在、団塊世代が75歳以上を迎える2025年問題が重要視されているが、より深刻なのは団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年問題。というのもこの世代が労働市場に入ってきたときはバブル崩壊後で、非正規雇用も多く生涯賃金が低い集団である。世代別の給与額を見ても、他の世代がプラスのときでもマイナス、他の世代がマイナスのときはさらにマイナス幅が大きいという統計が出ている。この低さは年金額にも反映される。非正規雇用者で厚生年金に加入していなければ、さらに老後生活は貧困に直面する。まずは厚生年金への加入を促進することが優先される。団塊ジュニア世代にハンディがあるのは、生涯賃金が低いだけでなく、この世代を支える側も少ないという点。だからこそ、女性や高齢者が社会を支えられるしくみを早急につくるべきである。

生涯現役社会とは単に高齢者が働き続けられるしくみというのではなく、老若男女すべての人の働く能力が満たされる社会のことである。

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