年金時代

雇用労働 複数就業者の労災給付は賃金額を合算して算定へ

厚生労働省は6月12日、複数就業者への労災保険給付についてこれまでの検討状況をまとめた中間整理案を労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(部会長=荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に示した。複数就業者の労災給付額については、副業・兼業先のすべての事業場の賃金額を合算して給付額を算定する方向で検討を進めることで一致した。一方、業務上の負荷の合算については、引き続き議論を深めるとした。

現行の労災保険制度は、複数の事業場で雇用される労働者が業務上で被災した場合、災害の発生した事業場の賃金額に基づき給付が行われる。このため、被災により複数の事業場で就業することができなくなっても、労災保険で補填されるのは災害の発生した事業場1ヵ所の賃金額に対してのみであり、副業・兼業を促進する上で制度的な課題の一つとされていた。

給付に反映する賃金額の合算にあたって主に検討されたのは、①事業主の災害補償責任、②給付の原資となる保険料の取扱い、③賃金額の把握手段の3つ。このうち①事業主の災害補償責任に関しては、災害の発生した事業場の事業主が他の事業場の賃金を基礎とした給付分まで労働基準法上の災害補償責任を負うとするのは使用者責任を著しく拡大するものであり、不適当だと指摘。給付分に反映される非災害発生事業場の事業主についても、当然ながら災害補償責任を負わないと整理した。

一方、労災保険率は業種ごとの災害率等に応じておおむね3年ごとに改定されており、また個別事業場の災害の多寡に応じて保険料率が増減するメリット制を採用している。新たに加味することとなる非災害発生事業場の賃金を基礎とした②給付分の原資(保険料)については、保険料率やメリット収支率の算定基礎としない方向で検討する。現行でも通勤災害等に対する保険給付は算定基礎としない取扱いをしており、これと同様の取扱いを視野に入れる。

非災害発生事業場の③賃金額の把握については、請求者の自己申告を原則とし、その内容の確認に必要な賃金等に関する証明を請求者に求める方向で検討するとした。

中間整理案ではこのほかの論点として、特別加入者の取扱いや就業規則で副業を禁止した場合などの取扱いなどを提示。業務上の負荷の合算の可否も含めて、中間整理後に引き続き検討を進める予定だ。

年金時代