年金時代

対談 日本年金機構10年のあゆみを振り返るー模索と基盤づくり、そして再生への途ー

第1期中期目標・計画期間
ガバナンスの確立と記録問題

山崎 第1期の中期計画についてはいかがでしょうか。

薄井 第1期中期計画は、平成22年1月から平成26年3月までですから4年3か月です。まず年金機構の基本理念というのがあって、①国民の信頼、②国民の意見の反映、③サービスの質の向上、④業務運営の効率化、⑤公正性・透明性の確保、これらを踏まえたうえで、お客様の立場に立ったサービスの提供、お客様の意見を反映した業務運営と情報公開、官民人材融合による能力・実績本位の新たな組織風土の醸成、コンプライアンスの徹底・リスク管理の仕組みの構築など組織ガバナンスの確立という運営方針を掲げて業務運営を行うことになりました。
特にそのなかの「お客様」ということでいうと、お客様へのお約束十か条というのが大きな柱でした。第1期の中期計画で大きかったのは、一つは、年金機構の基盤をつくること、これはガバナンスの確立やお客様の立場に立つということを含めてですね。それからもう一つは、記録問題の対応をきちんとやるということ。この2つが大きな課題だったと思います。
結果として十分ではなかったわけですが、報告・連絡・相談は比較的なされるようになるなどガバナンスも一定程度の確立はできたと思っていますし、何よりも業務の円滑な移行とお客様サービスという観点も浸透してきたという意味で、基盤はある程度つくれたと考えています。もちろん課題はいっぱいありましたが。
記録問題については最優先でやってきました。特に紙台帳とコンピューター記録の突合というのは一大事業だったわけですが、これも予定期間のなかでおおむね終わったと思います。ただ、その結果、再裁定にものすごく時間がかかり、記録は見つかったけれどなかなか給付してもらえないケースがあって、厳しいご批判を受けました。社会保険庁の最後の頃にも長くかかっていたということはあったのですが、紙台帳とコンピューター記録の突合で多くの記録が見つかったということですね。最近のシンプルなケースだけではなく、時効がないわけですから旧法の知識もないと仕事ができないという部分もあるわけで、そうするとどうしてもそれがわかる職員というのが限られてしまい、そこがボトルネックになりました。ベテラン職員を必要とするところは2つあって、直接お客様の相談に携わる部署と、実際に年金を決定する部署に、そういう知識のある職員が必要となりました。体制をどう組むかということが課題となりました。

山崎 本来業務と競合しますよね。限られた人材で。

薄井 もちろん適用、徴収という本来の仕事はきわめて重要ですけれども、やはり社会保険庁最後の頃からしばらくは記録問題に人手がとられるために、本来の仕事が手薄になってくるというところがありました。第1期中期計画期間には、まだそういうところがあったと思います。有期雇用職員で対応するということはやっていましたが、やはり知識、経験を有する部分というのはそう簡単には手当てできませんでした。

山崎 私も国会で発言する機会がありました。「年金記録問題は非常に大事だけれども、現状ではそちらに人手を相当割かれて結果的に本来業務に支障をきたし、新たな記録問題等を発生させるのではないかという懸念もあります。この点、ご配慮をお願いします」、という趣旨の意見陳述をしたことがありました。そのように不安を感じていました。
ところで三六協定があるわけですが、現場の働き方はいかがでしたか。

薄井 三六協定は決めたルールのなかでやるのですが、残業手当が出るからいくらでも残業してよいということではいけません。普通の会社でもそうですが、効率的に仕事をしましょうということを言っていました。

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