年金時代

公的年金 年金部会が制度改正の議論を一巡

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=神野直彦・日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授)は10月30日、法改正によって業務の効率化を図るための制度改正事項や業務運営改善事項について審議した。これで年金制度改正に関する議論が一巡したことになり、次回以降はこれまでの検討内容についてさらに議論を深めていくことになる。この日審議した内容は以下のとおり。

厚生年金保険の適用除外要件の見直し

現行では、雇用契約が2ヵ月以内かどうかで社会保険の適用が判断されており、2ヵ月以内の雇用契約であっても繰り返し契約している場合には「引き続き使用されるに至った場合」として社会保険を適用しているが、最初の契約期間である2ヵ月は適用の対象とならない。そのため、2ヵ月を超えて使用されることが見込まれる人についても社会保険の対象とすることができるように改正を行う。これにより、最初の2ヵ月の雇用を含めて当初から社会保険を適用することが可能となる。

未婚のひとり親等の申請全額免除基準への追加

平成31年度税制改正大綱で令和3(2021)年度分の個人住民税から、児童扶養手当を受給していて前年の合計所得金額が135万円以下の未婚のひとり親が非課税措置の対象に加えられることになった。これに伴い、国民年金保険料の申請全額免除基準でも未婚のひとり親を対象とする。また、すでに非課税措置の対象となっている「地方税法に定める寡夫」を国民年金保険料の申請全額免除基準の対象に加えることとする。

脱退一時金制度の見直し

短期滞在の外国人に被保険者だった期間に応じて支給される脱退一時金は、3年を支給上限としている。今年施行された改正出入国管理法によって在留期間の上限が5年になったことや、3~5年滞在する外国人の割合が増えていることから支給上限を3年から5年に引き上げる。

年金生活者支援給付金における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し

年金生活者支援給付金制度は今年10月から実施されているが、法施行後に支給を判定するための所得や世帯情報の照会対象者は、既存の受給資格者のみとなる。これでは新たに対象者となった人に請求書を送付することができないため、支給対象者になりうる人も所得・世帯情報の照会の対象者とし、請求書を送付できるようにする。また、請求書の送付に伴い、令和3年から、8月~翌年7月だった所得情報の切り替え時期を10月~翌年9月に変更する。

国民年金手帳から基礎年金番号通知書(仮)への切り替え

被保険者情報がシステムで管理されていることやマイナンバーの導入により、手帳という形式を用いる必要がなくなっていることを踏まえ、手帳の役割を本人に対する基礎年金番号の通知に特化し、効率化やコスト節減などを図る。そのため、20歳到達者など新たに第1~3号になった人には年金手帳ではなく新たな「基礎年金番号通知書(仮称)」で通知する。

厚生年金保険法における日本年金機構の調査権限の整備

現行では、国税庁からの情報提供により適用の可能性がある事業所に加入指導を行っているが、事業所への立入調査は適用事業所のみとなっている。未適用事業所で適用事業所である蓋然性が高いと認められる事業所に対しても法的権限に基づく立入調査ができるようにする。

年金担保貸付事業の廃止

年金受給権を担保として小口の資金の貸し付けを行う年金担保貸付事業は、平成22年の閣議決定で廃止が決定され、令和3年度末に新規貸付の申込受付を終了する。この事業の廃止のため、必要な法制上の措置を講じる。

これらの制度改正について委員からはおおむね賛成の意見が出されたが、厚年の適用除外要件の見直しについては実務の負担を考えたうえで実態調査を実施してから再検討を求める意見が出た。また、国民年金手帳から基礎年金番号通知書(仮)への切り替えについては「20歳といった若い対象者に紙ベースのものを渡すこと自体どうなのか。紛失したときの再発行など手間や事務コストを考えるとねんきんネットに誘導できるように、最初からアクセスキーを渡して簡単に登録させ、ネットで基礎年金番号を確認できるようにするべき」という意見があった一方で、「手帳形式である必要はないが、急に簡素化するべきではない。紙ベースだと加入意識が生まれると思う。ネット化もいいが、目立つように紙で残したほうがいい」という意見もあった。

このほか、報告事項として令和2年3月末に標準報酬月額の平均額の2倍が62万円を超えていた場合、同年9月から厚生年金の標準報酬月額等級の上限に1等級(第32級:65万円)加えることが示された。

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