年金時代

企業年金 企業年金の普及に向けた改正の方向性が示される

厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会(部会長=神野直彦・日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授)は11月8日、企業年金の普及に向けた制度面・手続面の改善について審議した。年金局は、これまでの議論を踏まえて以下のことを提案した。

中小企業向け制度の対象範囲の拡大

企業年金の実施率は従業員数が300人未満の企業で低くなっていることから、簡易型DCやiDeCoプラスに加入できる従業員数を現行の100人以下を300人以下に拡大する。

企業年金の加入資格

企業年金の加入資格等は「同一労働同一賃金ガイドライン」の「基本的な考え方」を踏まえた取り扱いとし、その旨をDBとDCの法令解釈通知にも明記する。また、DBと企業型DCとで法令解釈通知の記載内容が整合的でないところがあるため、記載内容を整理する。

企業型DC加入者のiDeCoへの加入要件緩和

現行では、労使合意に基づく規約の定めがあって事業主掛金の上限を引き下げた企業に限って企業型DC加入者でもiDeCoに加入できる。これを規約の定めや事業主掛金の上限の引き下げがなくても加入できるように改める。

iDeCo関連の改善

  • 企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCo加入の選択

マッチング拠出を導入している企業の企業型DC加入者は、加入者ごとにマッチング拠出かiDeCo加入かを選択できるようにする。

  • iDeCoの加入申し込み等

iDeCoの加入申し込みや変更について、現行は紙による手続となっているが、オンラインで行うことを可能にするなど、各種手続面の改善をできる限り速やかに実現する。

  • iDeCoの手数料について

iDeCoの手数料は、2012年に、2016年まで収支計算したものが基になっている。その後、2016年に制度改正があり、システム改修費用は手数料で賄うこととなるが、一方で、手数料を負担する加入者数も大幅に増加した。国民年金基金連合会は、今回の制度改正によるシステム改修費等の増額要因、手続の効率化等の減額要因、加入者数の現状と今後の見通し等を踏まえて、収支を再計算して手数料を再設定するし、前提となる期間を終了するごとに再計算・再設定する。

DCの中途引き出しの改善

例外的な扱いである脱退一時金の受給については、外国籍人材が帰国するときは制度に加入できず年金資産を積み増すことはできなくなることから、通算の掛金拠出期間が短いことなどほかの要件を満たせば、中途引き出しを認める。

ポータビリティの改善

企業年金・個人年金制度間のポータビリティは順次拡大されてきたが、終了したDBからiDeCoへ、企業型DCから通算企業年金へ資産を移換できないことなど不十分な点が残ることから、改善を図る。

DB・DCの各種手続の簡素化・負担軽減など

DCの規約変更の手続は、軽微な変更の場合届け出を不要とするなど。

ガバナンスの確保等

  • DBのガバナンス

DBのガバナンスの確保に向けたこれまでの取り組みは、多くが運用上・行政指導上の取り組みだったが、総合型DB基金の代議員の定数や総合型DB基金におけるAUP等の実施義務化、資産運用委員会の設置義務化権利義務について法令で規定することを基本的な方針として取り組む。

加入者への情報開示・分かりやすい説明として加入期間に応じた給付額や将来見込額などについて加入者ごとに通知・開示する事例がある。こうした取り組み事例の周知等により事業主の取り組みを促す。

  • 企業型DCのガバナンス

継続投資教育、運営管理機関等の評価、運用商品のモニタリング、運用商品提供数、商品除外手続、指定運用方法の設定などについて、施行後の実態を把握したうえで、改めて議論する。

企業型DCの運営に当たって、社内に年金委員会のような組織を設ける事例がある。また、日常的・定期的な制度運営に際しても、加入者の意見を聴取し制度運営に反映できる体制としている事例がある。こうした取り組み事例の周知等により事業主の取り組みを促す。

  • 個人型DCのガバナンス

iDeCoは国民年金基金連合会が受託者責任を負っていて、継続投資教育の努力義務や忠実義務などが課せられている。iDeCoの継続投資教育については、国民年金基金連合会は他の者に委託することができることとし、運営管理機関がこの委託を受けているが、企業年金連合会は、この委託を受けることができない。企業年金連合会は2017年4月から事業主からの委託を受けて継続投資教育を実施している。国民年金基金連合会からの委託も受けることができるようにし、企業年金連合会の実施するセミナー等にiDeCo加入者が参加できるようにするなど、両連合会の連携を強化する。

支払保証制度

支払保証制度については、財源のほか、「導入する必要性、企業年金の性格、受給権との関連、モラルハザードの回避方策など」の検討課題を整理したうえで改めて議論する。

年金バイアウト

イギリスで導入されている閉鎖型DBのバイアウト等のように年金支払義務を社外に移転させるしくみについて、導入の必要性や可能性等を受給権の保護やガバナンスの確保等の幅広い観点から整理したうえで、改めて議論する。

いわゆる選択型DC・選択制DC

いわゆる選択型DC・選択制DCは、労働条件の不利益変更であるとともに社会保険・雇用保険等の給付にも影響するものであり、導入に当たって事業主はこれらの点を含めて正確な説明をすべきであることを法令解釈通知に明記することとする。また、規約の審査を行う地方厚生(支)局は、事業主がどのような資料を用いてどのような労使協議を行ったのかを「協議の経緯を明らかにする書類」に記載させ、これらの点を確認すべきであることを厚生労働省から地方厚生(支)局に宛てた通知(審査要領)に明記し、確認の徹底を図ることとしてはどうか。

これらの提案に対して委員からはおおむね賛同する意見が多かったが、手続や事務について事業主の負担にならないよう留意すべきといった意見もあった。

年金時代