年金時代

【ねんきん最前線 市区町村VOICE】静岡県静岡市 保健福祉長寿局健康福祉部保険年金管理課

おくやみ窓口の設置で
高齢社会に対応したサービスを実現

いま市町村が行う国民年金事務は第1 号被保険者の届書と第1号被保険者期間のみの年金請求書の受理、そして年金相談などが主な担当業務となった。それにともない国民年金担当の職員数も削減されてきた。一方で、年金相談では、制度改正などもあり制度も複雑になるなか、幅広い住民の相談ニーズに対応しなければならない。そして、窓口業務においても行政サービスの充実が求められている。
限られた人員において、確実な事務処理と幅広い相談ニーズへの対応、そして窓口業務における行政サービスの向上という課題に、静岡市はどう取り組んでいるのか。山本正浩・保健福祉長寿局健康福祉部保険年金管理課長と瀬本幸広・葵区役所保険年金課国民年金係長に聞いた。

 

静岡市のあらまし

静岡市は温暖な気候に恵まれ、北は南アルプスから南は駿河湾に至るまで、豊かな自然環境を有しながら、古くから今川氏や大御所時代の徳川家康公の城下町として、独自の文化や産業を育み、日本の中枢都市として発展を続けてきました。特に「お茶」や「桜えび」、「プラスチックモデル」などの多様な産業や、国際貿易の拠点である清水港での交易は、本市の経済において重要な役割を担っています。また、登呂遺跡、久能山東照宮などの歴史的遺跡・建造物は、本市のみならず日本の大切な財産です(静岡市のホームページより)。

駿河湾に面し背景に富士山という風光明媚な静岡市(写真提供:静岡市)

 

静岡市の国民年金事業関係データ

○人口(2019年3月31日現在)
合計:699,946人(うち20~59歳335,536人、60~64歳41,558人、65歳以上209,556人)
・葵区:253,371人 ・駿河区:210,082人 ・清水区:236,493人
○第1号被保険者数(2019年3月31日現在―日本年金機構提供)
合計:78,291人(うち任意加入被保険者745人)
・葵 区:28,229人(任意加入被保険者含む。同区人口の11.1%)
・駿河区:24,557人(任意加入被保険者含む。同区人口の11.7%)
・清水区:25,505人(任意加入被保険者含む。同区人口の10.8%)
○免除者数(2019年3月31日現在―日本年金機構提供)
合計:31,838人
・法定免除:6,879人
・申請免除:24,959人(うち全額免除9,722人、一部免除1,760人、納付猶予3,057人、学生納付特例10,420人)
○国民年金受給者(2019年3月31日現在―日本年金機構提供)
・老齢基礎年金:204,571人(うち基礎年金のみ198,159人)
・障害基礎年金:11,723人
・遺族基礎年金:1,209人
○国民年金担当者数(2019年5月1日現在。同市役所保険年金管理課および3区役所保険年金課)
・本庁:2人(国保兼任係長1人、正規担当職員1人)
・区役所および支所(出張所): 22人(係長3人、正規担当職員10人、再任用職員1人、非常勤嘱託職員8人)

 

ミスがないよう事務処理をして、確実に年金事務所へ送達する

――静岡市は国民年金事業の観点から見るとどのような市なのでしょうか。

山本課長 2005年4月に全国14番目の政令指定都市になった静岡市は、静岡県のちょうど真ん中に位置し、葵区・駿河区・清水区の3つの行政区からなります。葵区はほとんどを山間地が占め、平野部は非常に狭く、そこに人口が集中し、市役所本庁も同区にあります。駿河区は太平洋の駿河湾に面し、ほぼ東海道本線より海側の地域となります。清水区は旧清水市、旧由比町、旧蒲原町だった地域で、南は駿河湾に面し、古くから海運・貿易で発展した清水港を有し、北は象の鼻のように静岡県側に突き出た山梨県の最南端に位置する南巨摩郡南部町に接しています。

人口は2019年3月末時点で699,946人と70万人を下回り、近年減少傾向が続いています。その一方で、2015年3月に27.8%だった65歳以上の人口割合は平成2019年3月には29.9%となり、5年間で約2%増加しています。また、2015年3月時点で約8千人の外国人がいましたが、2019年3月には約1万人と、5年間で約2千人と約25%の急激な増加を示しています。国民年金事業における人の動きを見ると、任意加入を含む第1号被保険者は対前年比で約3%減少。免除率および基礎年金等受給権者数はそれぞれ対前年比約1%増加しています。

国民年金事業は市役所本庁では保険年金管理課が担当し、窓口業務は3つの区役所の保険年金課が対応しています。本庁では交付金事務や年金事務所との調整等が主な業務で、各区役所においては国民年金に係る加入・脱退等の手続の窓口業務を担当しています。

山本正浩保険年金管理課長。

 

――窓口業務においてはどう国民年金事業に取り組まれていますか。

瀬本係長 現在は、法定受託事務としては適用関係で第1号被保険者の届書の受理と給付関係で第1号被保険者期間のみ有する方の裁定請求の受付を主に行っており、保険料徴収、納付記録や加入履歴の管理も行っていません。したがいまして、市が管理するデータに基づいて、受理した届出の確認をすることはありますが、本市独自で行う事務はありません。

窓口で受理した書類は市の端末に入力し、日本年金機構に送達します。それに基づき、免除の審査も年金機構で行いますので、その後の処理は市がやることはありません。そのため、年金機構との取り決めにある事務処理を確実に行うということです。

そのほか、国民年金事務については法定受託事務のほかに国や年金機構との協力連携事務として、年金相談について電話や窓口での対応があります。

例えば、「こんなものが届いたのですが…」と言って、国民年金保険料の納付書を区役所の窓口にお持ちになるお客様がいるのですが、納付記録のデータを市では持っていませんから、それに基づいたお答えはできません。お客様のお話を聞いて、結果的に免除申請をご案内することもあるのですが、年金相談では、必要であれば、市が保有していない年金記録を年金事務所に確認しなければなりませんので、年金事務所との連携はしっかり取っておくことが必要だと考えています。

瀬本幸広葵区保険年金課国民年金係長。

 

――適用関係における1号の届書の受理ですが、実際にはどう処理されているのですか。

瀬本係長 住所を異動しただけでは国民年金の被保険者資格はかわらないので、国民年金の窓口では異動されてきた方と直接やりとりをするのではなく、戸籍住民課から住民異動の情報を受け、該当者については市のシステムに登録しています。

転入された方に対しては戸籍住民課で状況を聞き取って、必要がある方については、同じ1階のフロアにある年金の窓口に回っていただくよう案内をしています。年金窓口に来られたお客様には直接ご説明して、ご質問に対して丁寧に対応しています。そして、手続が必要な方については手続をしていただいています。たとえば前の住所地で会社を辞められて、すぐに転入されてきた方は、前の住所地で資格の異動の届出はしていない方がほとんどです。そういう方はこちらの窓口で改めてご説明して、厚生年金から国民年金への切り替え、国民年金の被保険者資格の切り替えのお手続をしていただいています。

――本庁と各区の国民年金担当者同士はどう連携しているのですか。

山本課長 担当者を集めての会議の場を設けることはしていません。そのかわりに、庁内システムを使って情報を伝えることができますので、厚生労働省や日本年金機構・年金事務所から出された通知、通達についても、その解釈も含めて、各区役所の担当者同士で情報共有しています。会議が必要な場合は、テレビ会議で3区の担当職員と本庁保険年金管理課の職員の4者が一堂に会して、会議を開催できるようになっています。

――法定受託事務により市が行う事務が限定されることになりましたが、お客様と窓口で接するとき、どのような問題がありますか。

瀬本係長 確かに以前は、国民年金事務はすべて市町村が担当していたため、市民の方などは国民年金のことは市がすべてわかると思っているので、自分の未納の状況を確認したい、加入履歴を確認したい、自分の世帯だったら免除申請できるのか、結局、市で答えられないようなことを質問してきます。そうすると、申し訳ないのですが、年金事務所でないとデータを持っていないので、答えられないと言うしかないのです。行政の役割分担、行政の事情ということで、市民の方のご質問にお答えできないようなことになってしまい、 歯がゆい気持ちでいます。

――年金事務所には住民の加入記録などの確認はどのようにしているのですか。

瀬本係長 基本的に手続きがある方や会社を退職した方、未納の期間があるがわからないという方については問い合わせることはありますが、過去全部の期間を通じての記録確認ということは、電話での問い合わせは行いません。また、市では、単に加入履歴や年金記録を知りたいという問い合わせに関しては、情報提供していません。お客様と年金事務所の間に入って、まちがったことを言ってはいけないので、年金受給の請求をするときや被保険者資格の切り替えをするときの直接手続に関係するときだけ、年金事務所に年金記録の確認をしています。

年金事務所とは良好な関係だが、ねんきんダイヤルの電話がつながりにくい

――年金事務所との協力連携事務はどうやっていますか。

瀬本係長 静岡市には静岡・清水の2つの年金事務所があり、旧清水市と合併する前の旧静岡市が現在の葵区と駿河区にあたるのですが、ここに静岡年金事務所があり、もう1つの清水年金事務所は清水区にあります。これら2つの年金事務所とは、国民年金の事務についての問い合わせや照会などを行い、良好な関係で連携できています。

年金受給者が亡くなったりしたときには年金記録を確認するのですが、年金事務所からは、直接事務所に電話連絡するのではなく、ねんきんネットを利用してほしいと言われています。静岡市では年金事務所に、年金受給者が亡くなったときの年金の手続に必要なものとして、窓口にお持ちいただくもの一覧、未支給年金の請求書、年金事務所の予約相談のチラシ、予約相談の電話番号などをひとまとめにしたものを、事前にご用意いただいています。昨日も在庫がなくなってきたので、500組ほど年金事務所にご用意いただくようお願いしました。

市で手続ができる方には、市から年金事務所に確認しますが、厚生年金の加入期間がある方にはねんきんダイヤルのご利用をお願いしています。しかし、いま問題なのが、ねんきんダイヤルの電話がつながりにくくなっていることです。

――マイナンバーについてはセキュリティの観点から、その活用や情報連携にどう取り組まれていますか。

瀬本係長 年金事務所では、たとえばお客様から電話での問い合わせがあった場合は、基礎年金番号かマイナンバーをお伝えいただければ、お答えすることになっているようですが、市から年金事務所に問い合わせるときには絶対に市民の方のマイナンバーは言いません。窓口でもマイナンバーは一切口にしません。たとえばお客様がマイナンバーを記入されたときには端末で見るだけで、しかも必ず複数の職員で目視で画面を確認しています。ですので、マイナンバーでの問い合わせには窓口でも電話でも市は一切受け付けていませ ん。年金機構に対してもマイナンバーをもとにした問い合わせはしませんし、基礎年金番号がわからないときは氏名、生年月日、住所で検索していただいています。

――外国人に対しての年金制度のご案内についてはいかがですか。

山本課長 外国人を対象にした日本語学校が静岡市にはいくつかあります。そこの学生たちが毎年4月と10 月にまとまって、免除申請に来ます。ただ、多くの場合、いっしょに日本語が堪能な学生たちの先輩などがついてきてくれるので、窓口の職員が会話で苦労するようなことはほとんどありません。

日本語で対応することができないような場合は、葵区役所も入っている本庁舎の15階に男女参画・多文化共生課という部署があります。外国人の各種手続について担当しているわけではありませんが、そこに連絡して通訳してもらったり昨年9月に導入した通訳タブレットを活用しています。

――国民年金事務について、国・日本年金機構への要望はありますか。

瀬本係長 全国都市国民年金協議会を通じて要望等を上げていますが、特に、障害年金についての事務はす べて年金機構でやっていただきたいですね。それというのも、以前、私は旧清水市と合併する前の旧静岡市の国民年金課にいたのですが、そのときは国民年金事務全般の業務を市が行い、30人近い職員がいました。その当時は保険料係、給付係、年金係があり、年金手帳も市で交付していましたし、保険料の納付書も市が発行・送付していました。そして、保険料は保険料の係が、給付は給付の係が、そして給付の係でも障害年金を主に担当する職員と、老齢年金を主に担当する職員が各業務において専門性を持って業務に携わっていました。ところが、いまは年金機構と国民年金事務の役割分担がなされたことで市においては業務範囲が縮小され担当職員も削減されてしまいました。そうすると、職員1人1人が適用から、免除、給付請求の受付まで、すべてをこなし、相談業務では国民年金制度全般におよぶ質問に対応しなければなりません。そのような中、専門性の高い障害年金についての対応がより難しくなってきます。また、毎年の人事異動により、ベテラン職員の転出と全く畑違いの部署から職員が転入することもあり、障害年金というのは、半年や1年ではなかなかスキルが身につくものではないため、その時の対応に苦慮しています。

住民サービス向上からおくやみ窓口を設置

――窓口業務における行政サービスの向上についてはどう取り組まれていますか。

山本課長 2019年10月に3つの区役所に、「おくやみ窓口」を設置しました。お亡くなりになったときに必要となる各種手続のための窓口で、年金関係、健康保険、その他諸々の手続をいろいろな部署を回らずに済ませることができます。

瀬本係長 おくやみ窓口は区役所保険年金課内に設置しており、ここで手続きをしたのち、ほかの部署にご案内しなければならないときは、担当した職員が次の部署までご案内しています。

――まさに高齢社会仕様のサービスですね。

瀬本係長 年金について市役所でできる方は区役所のおくやみ窓口のすぐ隣にある年金窓口で手続のご案内をします。手続を済ませたあと、年金事務所に行かなければならない方には必要な持ちものや、事務所の予約についてもご案内しています。たとえば、未支給年金について市役所でできる手続は第1号被保険者期間のみの方で、第3号被保険者期間のある方はできません。また、旧法の国民年金の受給者の方もできませんから、年金事務所で手続をしていただくことになります。おくやみ窓口においでいただくときに、年金証書や振込通知書を持っておいでいただければ、基礎年金番号が記載されているので、市役所で手続が完了するかどうかがわかります。市役所で手続が完了する方については、おくやみ窓口での手続が終了後、すぐ隣 の国民年金の窓口で、職員が年金事務所と連絡をとり、市役所で手続ができるかどうか確認を取ります。それは、わずかでも厚生年金の加入履歴があったりすると、市役所で手続を済ますことはできないからです。そして、市役所で手続が完了することが確認できれば、そのまま必要書類のご案内をして、必要書類がすべてそろえば、その日のうちに市役所で手続を済ませていただきます。一方、厚生年金の記録があることが判明した場合には、年金事務所での手続をご案内させていただいています。

山本課長 小さな市町はわたしどもの組織のように担当部署が分かれていません。住民課で、戸籍から、年金、税までいっしょにやっているところが多いです。だから、小さな役所では1ヵ所で済むのですが、先ほど 申し上げましたように、行政の規模が大きくなれば、部署も細分化され、その一方で、法定受託事務で役割分担された業務は限定され、人員も削減されました。そうしたなか、市民のみなさんへのサービスの向上とともに効率的にサービスをご提供していくうえでも、窓口だけは1ヵ所にして手続を行い、必要があれば必要となる部署にご案内させていただくかたちをとりました。

瀬本係長 死亡届は葬祭業者が手続されるケースが多いので、市では届出された業者に、おくやみ窓口のご案内をお渡しし、葬祭業者から亡くなられた方のご遣族にご案内をお渡ししていただいています。

――本日はどうもありがとうございました。

右から山本正浩保険年金管理課長、瀬本幸広さん(葵区保険年金課)、大石遥輝主事。

 

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