年金時代

【書評】権丈英子著『ちょっと気になる「働き方」の話』(評者:社会保険労務士 井戸美枝)

働き方と社会保障を学ぶ入門書だが
新型コロナ感染防止でテレワーク導入の参考にも

結論から申し上げますが、本書は本棚に備えておきたい一冊であることは間違いないと思います。
本書の帯に「働き方と社会保障を一体のシステムとして、根本から分かりやすく教え、学ぶための入門書」と記されています。この帯の文章そのものが本書の内容を伝えています。ここで、私事になりますが、私は厚生年金受給者で、受給年額は2万円にも達していません。もちろん、65歳になると国民年金を受け取れば、受給額は増えますが、公的年金だけで安心できる生活ができるかというと、甚だ心許ない状況です。では、なぜこのような状況になっているのか。厚生年金加入期間の短さ、低い給与額、個人自営業などによるものです。その詳細は本書にあります。女性のライフスタイルが大きく変わってきていますが、まだまだ、非正規雇用の比率が高く、賃金も低い。よって老後の年金額も低くなってしまっているのが現状です。
目次を順次、確認していくと、自然と日本の戦後、「働き方」を社会保障との関わりに中で理解できるようになっています。具体的にみていきますと、本書は、大きく分けて3部からなっています。
「手早く詳しく知りたい人のために」
「少し詳しく知りたい人のために」
「知識補給」

まず「手早く詳しく知りたい人のために」は、第1章として「働き方の改革と、これに関わる社会保障の動きの概観」となっており、講演内容がベースになっているため、非常に分かりやすく、図表付きで統計資料も付属されており、レファレンス用の資料にもなっています。
「働き方」に関するキーワードは、ワーク・ライフ・バランス、長時間労働、男女の働き方、高齢期雇用、女性労働、非正規雇用などです。本文では、「ジャンプ」として専門用語の解説も入っています。これは、第3の部分である「知識補給」と連携しており、短時間で正確な知識を深めることができます。丁寧に第1章と知識補給を、交互に読んで行けば、知っておきたい「働き方」を身につけることができるようになっています。

次に、第2部「少し詳しく知りたい人のために」が4章から編集され、現在およびこれからより解決が求められる課題についてのテーマ別の詳細解説です。
第2章 民間企業と公務員における高齢期雇用
第3章 女性活躍推進法と女性労働の現状と課題
第4章 パートタイム労働法とパートタイム労働の現状と課題
第5章 オランダにおける柔軟な働き方の活用と政策展開
各章を個別にみる余裕はありませんが、関連法規が明示され、社会保障全体での位置付けも理解されるように配慮されており、ここでも入門書としてのレファレンス性を有しており、検索資料としても利用できます。
最後に、なぜオランダが取り上げられているかと思っていたのですが、やはり海外での先進事例は参考になります。
現在(2020年3月29日時点)において、新型コロナウイルスによる感染防止のための移動自粛などによる経済への負の影響が顕在化しつつある状況において、オランダの事例は象徴的な意味合いを持っています。具体的には、パートタイム社会オランダ(労働時間選択の自由)、フレックス雇用、テレワーク(就業場所の柔軟性)などがあげられています。特に、現在のような新型コロナウイルス感染防止のための移動自粛には、就業場所が限定されてしまうことへの対応策としてテレワークが有効であると思われます。オランダでの統計資料をみる限り、高いテレワークの普及は大いに参考になると思います。

『ちょっと気になる「働き方」の話』
権丈英子 著
勁草書房
本体2,500円+税
2019年12月刊

評者:井戸 美枝(いど みえ)
CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。
社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。
経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『受給額が増える!書き込み式得する年金ドリル』(宝島社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)などがある。累計刊行部数は72万部を超える。
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