年金時代

第203回臨時国会 菅総理所信表明演説と各党代表質問から――新常態の社会のあり方を探る

第203回臨時国会が10月26日に召集され、同日、菅義偉内閣総理大臣が衆参両院本会議で所信表明演説、28日には衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男氏が代表質問を行った。国会審議から新常態における社会の方向性を示す発言についてピックアップした。

菅総理 所信表明演説(抜粋)

デジタル化社会の実現

今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れ、サプライチェーンの偏りなど、様々な課題が浮き彫りになりました。デジタル化をはじめ大胆な規制改革を実現し、ウイズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくります。

役所に行かずともあらゆる手続ができる。地方に暮らしていてもテレワークで都会と同じ仕事ができる。都会と同様の医療や教育が受けられる。こうした社会を実現します。

そのため、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めます。今後5年で自治体のシステムの統一、標準化を行い、どの自治体にお住まいでも、行政サービスをいち早くお届けをいたします。

マイナンバーカードについては、今後2年半のうちにほぼ全国に行き渡ることを目指し、来年3月から保険証とマイナンバーカードの一体化を始め、運転免許証のデジタル化も進めます。

こうした改革を強力に実行していく司令塔となるデジタル庁を設立いたします。来年の仕事に向け、省益を排し、民間の力を大いに取り入れながら、早急に準備を進めます。

教育は国の礎です。全ての小中学生に対して1人1台のIT端末の導入を進め、あらゆる子どもたちにオンライン教育を拡大し、デジタル社会にふさわしい新しい学びを実現します。

さらに、テレワークやワーケーションなど新しい働き方も後押ししてまいります。行政への申請などにおける押印は、テレワークの妨げともなることから、原則全て廃止します。

マスクや防護ガウンの生産地の偏りなど、サプライチェーンの脆弱性が指摘されました。生産拠点の国内立地や国際的な多元化を図るとともに、デジタル化やロボット技術による自動化、無人化を進め、国内に医療・保健分野や先端産業を整備してまいります。

グリーン社会の実現

菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。

我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。

もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要であります。

鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資の更なる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。

省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。

目指す社会像は自助、共助、公助、そして絆

私が目指す社会像は、自助、共助、公助、そして絆です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りをする。そうした国民から信頼される政府を目指します

そのため、行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます。国民のために働く内閣として改革を実現し、新しい時代をつくり上げてまいります。。

所信表明演説に対する立憲民主党の枝野幸男衆院議員の代表質問

共生社会の実現

先日合同葬儀が行われた中曽根元総理は、国鉄や電電公社などの民営化を進めました。それから30年余り、ある時期までの私自身を含め、政治は、競争と効率、そして民営化を掲げ、小さな政府を追い続けてきました。しかし、コロナの影響を受け、こうした新自由主義的な社会のあり方が、今も、そしてこれからも、本当に正しいのか突きつけられています。

そんな中で問われているのは、これからの日本をどうするのか、その大局的なビジョンです。立憲民主党は、一人一人の命と暮らしを守るために、目先の効率性だけにとらわれず、人を幸せにする経済を目指します。新自由主義にかわる新しい選択肢として、政治が責任を持って支え合いの役割を果たす共生社会の実現を目指します。

競争や効率を否定するのではありません。しかし、それは、命と暮らしを守ること、そして人を幸せにするためのものであることが前提のはずです。

私は、日本全体で、つまり政治と行政の力で、お互いさまに支え合う仕組みをつくります。思いも寄らない病気やけがが、失業などに直面をしても生活が成り立つ。年老いても安心して生活できる。家庭を持ちたい、子供を産み育てたいと願う方が、その望みを心配することなくかなえることができる。そして、何よりも命を守る。そのために、政治と行政による支え合いの仕組みを充実させます。

第一に急ぐのは、命と暮らしを守る上で欠かせない基礎的なサービス、ベーシックサービスを全ての皆さんに保障することです。

二つ目に、公共事業などのハード面や、従来型の開発という視点を軸としてきた地域政策を、暮らしに重点を置いたものへと変えていきます。

これからの日本経済の牽引役として、世界に貢献していく分野として、何よりも、地域の潜在力を生かす柱として、自然エネルギー立国を推進します。

枝野議員からの質問に対する菅総理の答弁

枝野議員の質問

⑴支え合いによって将来の不安を小さくし、格差を縮小して貧困を減らすことは、消費を拡大させる本質的で最も重要な経済対策であります。

OECD、経済協力開発機構は、既に2014年、所得格差が拡大すると、経済成長は低下するとの調査結果を発表しています。この調査結果に対する総理の見解を伺います。

⑵総理が2050年までの脱炭素社会実現を打ち出したことは歓迎します。しかし、そのために原子力発電への依存を強めることがあってはなりません。

2050年の脱炭素社会において、発電における原子力の依存度をどのように見込んでいるのか、総理の認識を明確にお答えください。

⑶再生可能エネルギーの導入を進めるには、送電網をできるだけ安くかつ幅広く開放することが欠かせません。具体策を経済産業大臣にお尋ねします。

⑷総理の言う自助と共助と公助を順番に並べる考えは、端的に言って昭和の成功体験にとらわれた時代おくれのものなのではないでしょうか。

最後に、改めて総理にお尋ねします。

日本をどんな未来へと導こうとしていますか。

菅総理の答弁

⑴OECDの報告書についてお尋ねがありました。

御指摘の報告書では、先進国の傾向として、所得格差が拡大すると経済成長は低下することや、その理由として、貧困層ほど教育への投資が落ちること等の主張がなされていると承知をしています。

格差と経済成長の関係についてはさまざまな議論があり、一概に申し上げられませんが、格差については、それが固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものではないことが重要です。

このため、菅内閣では、経済再生に取り組む中で、最低賃金の全国的な引上げ、一人親家庭への支援など子供の貧困対策、同一労働同一賃金など働き方改革に加え、就職氷河期世代を含む全ての方が働くことや社会参加することを促進できるよう、個々人の状況に応じた支援策に取り組み、格差が固定しないよう、さらに、許容し得ない格差が生じないよう、さまざまな施策を進めてまいります。

⑵脱炭素社会と原子力発電についてのお尋ねがありました。

徹底した省エネ、省エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが政府の方針です。

2050年カーボンニュートラルは簡単なことではなく、温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の取組が特に重要であり、再エネのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追及していきます。今後、2050年カーボンニュートラルを目指すエネルギー政策については、結論ありきではなく、梶山産業大臣が中心になって、集中的に議論をしてまいります。

[梶山弘志経済産業大臣答弁]送電網の開放に向けた具体策についてお尋ねがありました。

今後、我が国の送電網について、レジリエンスを強化しつつ、再エネの大量導入に対応した次世代型のネットワークに転換していく必要があります。

このため、全国各地の再エネの導入可能量も踏まえ、国が率先して全国大の送電網整備に関するマスタープランを策定し、事業者による整備を後押ししてまいります。

一方で、新たな送電網整備には費用と時間がかかることから、既存の送電網をより低コストで再生エネが利用しやすいようにルールも見直してまいります。

具体的には、送電網の空き容量を超えて再エネが発電した場合に出力を一部抑えることを条件に、より多くの再エネを送電網に接続する仕組みを2021年中に全国展開をいたします。また、そもそも石炭火力などより再エネが優先的に送電網を利用できるよう、ルールの抜本的な見直しを検討しています。

こうした政策を実施し、御指摘の再エネの導入に向けて最大限取り組んでまいります。

⑷目指す未来像と政治姿勢についてお尋ねがありました。

今回の演説では、デジタル化、グリーン社会の実現、地方の活性化、全ての方々が安心できる社会保障、日米同盟を基軸とした積極外交の展開など、政策の大きな方向性をお示ししました。

その根本を貫く考え方が、自助、共助、公助、そしてきずなです。まずは自分でやってみる、そして家族や地域で助け合う、その上で、政府がセーフティーネットでお守りをします。

まずは、こうした国民から信頼される政府を目指すことが大事であり、そのためにも、行政の縦割り、既得権益、そして、あしき前例主義を打破し、国民のために働く内閣として改革を実現してまいります。

また、私は常々、国民から見て当たり前のことを実現すべく取り組んでまいりました。今後も、現場の声に耳を傾けて、何が当たり前なのかをしっかり見きわめた上で、大胆に改革を実行してまいります。

年金時代