年金時代

第203回国会審議から――脱炭素社会に関連して(11月2日 衆議院予算委員会)

第203回国会は、11月2日、衆議院予算委員会において基本的質疑を行った。そのなかから、脱炭素社会に関連した質疑について掲載する。

○[質問]下村博文議員(自由民主党)
▶所信表明演説で、総理はグリーン政策を一つの柱に掲げた。なかでも、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロとする目標は、地球温暖化対策に取り組む姿勢を国際社会にアピールする十分に野心的なものと言えると思う。30年後の目標達成に向け、どのような取組を進めていく考えか、総理の決意を聞きたい。
○[答弁]菅義偉総理大臣
▶(2050年カーボンニュートラルのためには)温暖化への対応を経済の制約と考えるのではなく、積極的に温暖化対策を行うことを成長戦略としてとらえることが必要、イノベーションをしっかりと行っていくことが大事だと思っている。この挑戦を産業構造や経済社会の発展につなげて、経済と環境の好循環をつくっていきたいと思う。先週30日(10月30日)、地球温暖化対策推進本部に全閣僚が出席して行い、全閣僚が一丸となって取り組むよう、今後の具体的な方策は、成長戦略会議、あるいは新たに国と地方の場において、集中的に検討を行い、前に進めていきたい、と指示をした。

○[質問]下村議員
▶(2050年カーボンニュートラルについては)小泉環境大臣も非常に力を入れている。小泉大臣から、具体的なビジョン、工程などについて聞きたい。また、この大事業(2050年カーボンニュートラル)を成し遂げるためには、エネルギー政策をつかさどる経済産業省の協力が不可欠だ。梶山経済産業大臣からも、今後の取組に向けた決意を聞きたい。
○[答弁]小泉進次郎環境大臣
▶今後、環境省としては、経産省を含めて関係省庁一丸となって進めるが、まずはわれわれとしては、地球温暖化対策推進法の見直しの検討も深めて、そういったなかでしっかりと具体的な施策を位置づけていきたいと考えている。
○[答弁]梶山弘志経済産業大臣
▶2050年カーボンニュートラルへの挑戦は、日本の成長戦略そのものであると考えている。あらゆるリソースを最大限投入し、経済界、産業界とともに経済と環境の好循環を生み出していくことができるよう連携を取っていきたいと思っている。その実現に向けては、温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の取組が非常に重要だと考える。また、鉄鋼や化学などの産業分野も革新的なイノベーションを推進し、製造プロセスを大きく転換させていく必要がある。エネルギー産業全体を俯瞰し取り組むことが重要だと考える。2050年に向けた道筋は、経済産業省においては年末を目途に示していきたいと考える。具体的には、カーボンニュートラルをめざすうえで不可欠な水素、蓄電池、洋上風力、カーボンリサイクルなどの分野において、具体的な目標年限やターゲット、規制や標準化などの制度整備、社会実装を進めるための支援策などを盛り込んだ実行計画を年末までに取り組んでいきたいと思っている。高い目標に向かって大胆な投資を行う、果敢に挑戦していく企業に対しては、国も長期間にわたって支援していくことを検討したいと思っている。同じものをつくるのにも、その手段、方法が変わってくる可能性があるなかで、しっかりしたイノベーションのために、環境省と連携を取りながら取り組んでいきたいと考えている。

○[質問]下村議員
▶脱炭素社会を考えるとき、原発の問題はもう避けて通れないのではないかと思っている。原子力エネルギーの利用を今後も続けていくのか、どの段階で利用を終えるかについては、最終的には国民が判断することになるが、いずれにしても、重要な戦略として、一つは原子力の安全性を高めていく戦略、もう一つは原子力政策の柔軟性を高めていく戦略だが、これら2つの戦略について、梶山経済産業大臣はどう考えているのか。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶2050年のカーボンニュートラル実現のためには、現在ある電源、すべての手段や技術を駆使していかなければならない、その前提で取り組んでいかなければならないと思っている。そして、原子力の利用にあたっては、いかなる事情よりも安全性をすべてに優先させることは当然である。原子力発電を利用する以上、使用済み燃料の管理も含め、安全確保を大前提に核燃料サイクルを推進していく方針だ。この一環として、最終処分については、再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物について、国が前面に立って取組を進めているところだ。他方、将来の幅広い選択肢を確保する観点から、従来、エネルギー基本計画に基づいて、直接処分についても調査研究を進めている。

○[質問]小渕優子議員(自由民主党)
▶カーボンニュートラルの実現に向けた水素の重要性、また、各国の取組と比較した際、いま日本の立ち位置はどのようなものになっているのか。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶この1年で、EUやドイツ、オランダ、オーストラリアなど、多くの国で水素の国家戦略が策定されるなど、世界で水素の取組が本格化しているのが現実だ。他方で、日本は、2017年に世界で初めて水素基本戦略を策定し、水素の供給コストの削減や需要創出のための取組を進めてきた。具体的には、国内において、燃料電池車の普及に備え、官民一体で水素ステーションを整備するとともに、国際的には、液化水素運搬船を建造し、国際水素市場の創出に向けた取組を開始するほか、欧米の水素発電のプロジェクトに日本企業の技術が導入を予定されている取組が進んでいる。諸外国の勢いが増すなか、競争も非常に熾烈になっているが、日本が引き続き世界をリードしていくためには、技術開発や社会実装を重点的に行っていきたいと考えている。

○[質問]小渕議員
▶水素をさまざまな場で活用するための技術開発、その先の社会実装をどのように進めていくのか、国の方針を示してほしい。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶水素は、製造や輸送や利用といった点で、コストの削減をどうしたらいいか、需要を広げるにはどうしたらいいかをしっかりと開発していかなければならないと思っている。今後、カーボンニュートラルを達成するには、新たに水素の利活用が見込まれる産業部門、製鉄の部門では水素還元の技術などもこれからの大きなテーマであると思っている。発電も含めた幅広いプレーヤーを巻き込みながら、最先端の技術開発や社会実装を進めていくことが重要になると考えている。そのため、2050年に向けた道筋を、水素分野も含めて、年末を目途に、具体的な目標年限やターゲット、規制や標準化などの制度整備、社会実装を進めるための支援策などを盛り込んだ実行計画をまとめる予定だ。

○[質問]小渕議員
▶2050年カーボンニュートラルという大きな目標の実現には水素は欠かせない重要な役割を担うと考えるが、菅総理の考えを聞きたい。
○[答弁]菅総理大臣
▶水素は、二酸化炭素の排出をゼロにするクリーンなエネルギーであり、カーボンニュートラルの実現に向けて非常に重要なカギであると認識している。一方で、コストが高いという課題があるため、革新的なイノベーションを通じ、安価で大量に水素を供給するサプライチェーンを構築していくことが大事だと思う。これによって水素の利用をさらに促進することで、産業構造や経済社会改革をもたらして、経済と環境の好循環をしっかりつくっていきたいと思う。

○[質問]山際大志郎議員(自由民主党)
▶もともとエネルギーは、ずっと安全保障そのものだったうえに、経済安全保障の観点からもこのエネルギー政策を考えていかなくてはいけない。そういう視点に立って、総理は、このエネルギー政策をどのようにとらえて進んでいこうとしているのか。
○[答弁]菅総理大臣
▶今後、2050年のカーボンニュートラルをめざす道筋、これを含めたエネルギー政策について、経済安全保障の観点も含めて、集中的に議論して結論を出していきたいと考える。

○[質問]山際議員
▶再生可能エネルギーを最大限利活用したいという思いは、みんな共通している感覚だと思うが、それを妨げているのは、再生可能エネルギーを安価で安定して供給できる技術がいまのところまだないということだと思う。この技術革新を起こしていくために、どのような方策をこれからとっていこうとしているのか、梶山経済産業大臣に聞きたい。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶脱炭素技術のイノベーションに腰を据えて取り組む企業に国も長期間にわたって技術支援を行うとともに、市場拡大に向けて必要な規制改革や制度整備など、あらゆる政策を検討していきたいと思っている。

○[質問]山際議員
▶長期にわたる支援を国がしっかりしていくことが必要だと思う。そのあたりをもう少し詳しく説明してほしい。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶たとえば計画において、10年単位、20年単位の電力の計画を立てる、再エネの計画を立てるとか、開発段階においても、たとえば実証の試験も終わった後に技術者が他国に引き抜かれるような面もあるので、しっかりと腰を据えて民間の企業も支援していくこと、また、国の態度、国の考え方を民間に示していくことが必要だと思っている。

○[質問]山際議員
▶いま、現在そこにある原子力をしっかり利活用していくことは、当然のことだろうと思うが、原子力を使っていくことを前提の下、再稼働がどこまで進んでいるのか説明してほしい。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶すべての手段や技術をしっかりと駆使していかなければ、2050年のカーボンニュートラルは、達成できるとは、なかなか難しいと思っている。そういった点で原子力もしっかり活用していくが、原子力政策にはさまざまな課題があるが、再稼働はもちろんのこと、六ヶ所再処理工場の事業変更許可や、寿都町と神恵内村において高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する文献調査に向けた動きなど、一歩ずつ取組を進めているところだ。引き続き、これらの課題に粘り強く取り組んでいくことが必要であると思っている。こうしたなかで、安全最優先で再稼働を進めるという方針の下、これまでに9基の原子力発電所が再稼働した。2011年の事故の前に60基あったが、24基を廃炉とした。そして、36基、建設中のもの、また未申請のものもあるが、そういったなかで、しっかり再稼働に向けて取り組んでいく。いま、その信頼を取り戻す大きな期間であると思っている。技術的にも、また、地域の、また国民の信頼を取り戻すためにも、最善の努力をしていきたいと思っている。

○[質問]山際議員
▶原子力という未完成の技術に関して、これをしっかりと技術革新を進めていく、そういう意思が明確に政府全体として示されないかぎり、なかなか産業界としても予見可能性は低いし、あるいはそこに優秀な人材はなかなか来てくれないという悪い循環に陥ってしまうと思う。菅政権では一歩踏み出して、原子力に関してもしっかり研究開発を進めていかなくてはいけないと思うが、どうか。
○[答弁]梶山経済産業大臣
▶2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、再エネのみならず、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求することが重要であると考える。原子力のイノベーションも大変大きな政策課題であり、研究開発も進めていく必要があると思っている。このため、従来の軽水炉の安全性向上に加えて、米国や欧州、さらには中国やロシアといった諸外国の取組も踏まえつつ、出力が小さく、安全性を高めると同時に初期投資を抑える可能性があるものとして注目されている小型モジュール炉(SMR=Small Modular Reactor)、燃料を溶けにくい構造とし、高温でも安定したヘリウムガスを燃料の冷却に利用することで安全に高温の熱利用を可能とする高温ガス炉などのさまざまな革新的原子力技術の開発を、民間の創意工夫を生かしながら進めていきたいと思っている。また、放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用という、核燃料サイクルの効果をより高める高速炉の開発については、2018年12月に策定した高速炉開発の戦略ロードマップに基づいて、これまでに培った技術、人材を最大限活用するとともに、フランスや米国との国際協力も活用しながら、着実に進めていく。こうした取組を通じて、わが国も、革新炉開発を進める海外の波に乗り遅れることのないように、原子力分野でのイノベーションをしっかりと推進していきたいと考えている。

○[質問]竹内譲議員(公明党)
▶地球温暖化対策計画における2030年度の目標が重要で、2030年度に2013年度比で温室効果ガスの排出を26%減らすという目標をさらに大幅に上乗せする必要があるのではないか。EUでは、この7月の欧州委員会で合意されたこのうち35兆円を3年間でグリーン分野に集中投資することが表明されている。ドイツでも、6月3日発表で6兆円。フランスは、9月3日に、4兆円がエコロジー対策。韓国も、グリーンニューディール計画、5年間で約7兆円の環境分野への投資をコミットということが公表されている。GDPで比較すると、EUの場合だと、だいたい日本の2.5倍のGDPがあるので、日本でもEU並みのことをやろうとすると、約15兆円規模の基金を設立してはどうか。今後、民間事業者の投資促進税制、さらに、投資家が、個人、法人を問わずに、いわゆるESG投資と言われる、環境投資に税制面でのインセンティブを付与することも効果的であると考えている。これらの施策がデジタル化と並んで新たな日本の需要を生んでいくことは間違いないと思っている。これらの点を含めて、改めて総理の決意と考えを聞きたい。
○[答弁]菅総理大臣
▶2050年カーボンニュートラルを実現するために内閣全体として取り組んでいく、その体制づくりを、前回、内閣として行った。特に、温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の取組がきわめて重要で、電源についても、再エネのみならず、原子力を含むあらゆる選択肢を追求していきたいと思う。今後、電源構成を含めたエネルギー政策については、集中的に議論をして、早急に結論を出していきたいと思う。また、産業構造や経済社会への変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換を進めていくことが重要だと思う。受け身でなくて、みずから進んで行うことが大事だと思う。そういうなかで、規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるために、長期間にわたる支援策を講じて、革新的イノベーションを推進して、経済と環境の好循環を何としてもつくり上げていきたいと思う。

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