年金時代

【書評】岩城 みずほ 著(山崎 元/岩城 みずほ 共著)『人生にお金はいくら必要か』(評:原 佳奈子)

『人生にお金はいくら必要か〔増補改訂版〕』
山崎 元/岩城 みずほ 著
東洋経済新報社
定価(本体1,400円+税)
2019年11月刊

老後へ向けた貯蓄額を考えるにも
老後への資金計画を立てるにも
公的年金の理解が重要であると再確認

人生100年時代といわれるように、平均寿命が延び老後期間がますます長くなると考えられる中、老後、特に老後のお金に不安を抱える人が多くなっています。そのような状況の中で、この本は必要な貯蓄ができていれば、老後の不安も解消されるという切り口で、1人ひとり異なる必要な貯蓄額を計算するための「人生設計の基本公式」が提案されています。そして、この公式を使ったさまざまなケースが紹介されています。

老後の生活費が現役世代の生活費と比べてどの位の比率になるかなどを考えることから必要貯蓄率というものを計算しています。貯蓄からのアプローチで老後の生活設計を考えるという要素が盛り込まれています。

本の最初の方に、「人生全体のお金の流れを理解する」ということで、「大人になったら、お金を稼ぎ、稼いだお金は、今の生活費や、子どもがいる人は子どもの教育費などに消費します。同時に、残りを将来のために貯蓄しなければなりません。」とあり、続けて、「そして、稼ぎが減るかなくなった将来にその貯蓄を取り崩して生活します。」とあります。現役時代の稼ぎの一部を貯蓄しておいて、老後はその貯蓄の取り崩しと年金などの定期収入で生活をするという基本的な流れを理解することは重要だと思います。

また、平均寿命とともに日常生活に制限のない期間である健康寿命も延びている中で、今後は、お金を稼ぐ期間、つまり、働く期間を長くすることで、老後に取り崩す貯蓄額もその分減らせますし、厚生年金に加入して働いていればその分年金額も増えます。一方で、計画通りにいかない場合に備えて、いざという時に必要な予備資金というものも考慮しておく必要があると考えます。

いずれにしても、本の中にもありましたが、「運よく余ったら貯蓄する」のではなく、「必要額を先に貯蓄し、残りで生活する」ということがポイントであり、さらに老後のためのお金であれば、自動的に貯まるような仕組みですぐには引き出せない環境に置いておくことも重要なポイントになると思います。

そのうえで、私が特に感じたことの1つは、この本が提案する公式の中にも入っており、老後へ向けた貯蓄額にも大きく影響する公的年金の理解の重要性です。やはり、老後に向けた資金計画を立てるうえで、公的年金を理解することはとても重要であると考えます。この本では、「公的年金制度を正しく知って上手に利用しよう!」というテーマで公的年金を正しく知って活用する際のポイントがいくつか取り上げられています。

まずは、「年金は、60歳~70歳で自分でスタートを選べる『自由選択制』」であるということです。公的年金は原則65歳からの受け取りですが、就労期間などにあわせて、現在は60歳から70歳までの間で受給開始時期を選択できる制度があります。

そして最も大切なことと言えますが、年金は「保険」であるということです。社会保険の1つなので、保険料を払うことで人生のリスクに備え、リスクが生じた人は金銭的な保障を受けることができるということです。老齢年金では終身年金として長生きリスクに備えることができます。

2つめは、老後がますます長期化していく中で、今後は、これまでの将来生活設計の立て方とは異なる新しい発想で考えていかなければならないと思ったことです。セルフプロデュースという形で、自分で自分の年金を作っていくことなどを含めて、自分の老後の生活設計も自分で行っていくことが重要になると考えます。

方法はさまざまあると思いますが、例えば、自分の価値観にあった老後の生活をイメージし、「自分はどうありたいか」、どういう老後を過ごしたいかによって、老後に必要なお金も変わってきます。今の生活をもとにした老後の基本生活費や老後にやりたいことなどのイベント、さらにはリスク等を考慮した予備費からなる支出と、公的年金や企業年金・個人年金、或は就労といった収入を考えて、その収支を把握し、老後を何年分として計算するか、整理することも必要になるでしょう。

「老後のお金」については、様々な視点で考えてみることが重要であるということについて、また1つ新たな示唆を受けました。

評者:原 佳奈子(はら・かなこ)㈱TIMコンサルティング取締役、社会保険労務士
上智大学外国語学部卒業、早稲田大学大学院政治学研究科公共経営修士(専門職)。1級FP技能士(CFP)、1級DCプランナーの資格も持ち、社会保障審議会年金部会委員等を務める。年金・社会保障制度や将来生活設計に関する講演・執筆を行うほか、幅広い業界で企業研修の企画・実施支援、コンサルティング業務等に携わる。様々な形態によるライフプランセミナーの実施支援にも力を入れている。
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