年金時代

[公的年金]次期年金制度改正に向け、田村厚生労働大臣が方針示す

田村憲久厚生労働大臣は9月10日の定例会見で次期年金制度改正に向け、マクロ経済スライドによる基礎年金の給付水準の調整期間を短くして、厚生年金の報酬比例部分の調整期間と一致させる方向で省内で検討を進めていることを明らかにした。田村大臣は調整期間を一致させた場合、厚生年金の所得代替率が上昇するとして、制度改正に意欲を示した。

この発言は、厚労省が昨年12月25日に社会保障審議会年金数理部会に提出した令和元年の財政検証に令和2年の年金法改正を反映させた追加試算を踏まえたもので、それによると、下表にある経済前提で人口動態が中位推計の場合、報酬比例部分と基礎年金のマクロ経済スライドによる給付水準の調整期間を一致させるように調整を行い、マクロ経済スライドを発動し続けると、終了するのが2033年度になる。その場合の所得代替率は報酬比例部分で22.6%、基礎年金で32.9%となり、合計55.6%になる。現行のままの給付水準調整では報酬比例部分は2025年度で終了し所得代替率は24.5%となる一方、基礎年金は2046年度で終了し所得代替率は26.5%となる。この場合の所得代替率の合計は51.0%。調整期間を一致させた場合のほうが所得代替率は4.6ポイント高くなる見通しだ。

田村大臣は、「基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間を短くする、つまり厚生年金の2階部分と一緒にする財政調整が必要だと以前から申し上げてきた。厚生年金で所得の低い方々の所得代替率が上がることになるので、所得再分配の強化が起こり、所得の低い方々には手厚い年金になる。そういう方向で検討していきたい」と述べた。マクロ経済スライドによる給付水準の調整期間を一致させる場合、財政調整の方法は今後の検討課題となるが、厚労省では令和7年の制度改正に向けて議論を進めていく考えだ。

調整期間を一致させた場合、報酬比例部分と基礎年金の積立金は増加が見込まれる。年金数理部会に提出された資料によると、2035年度において、現行のままでは324.4兆円だが、341.4兆円となる。厚労省は、積立金の増加は現行よりも報酬比例部分のマクロ経済スライドによる給付水準調整が進むことで支出が減少するからだと説明する。現行の報酬比例部分の調整期間の終了は2025年度であるが、調整期間を一致させた場合、終了は2033年度になり、2025年度以降、積立金が増えることになる。積立金の増加分は、調整期間を一致させた場合、現行よりも基礎年金の水準が上昇するため、これに伴う支出増に充てる原資になる。

なお、平成16年の財政再計算では、報酬比例部分と基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間は19年間で終了することで一致していた。しかし、基礎年金は国民年金勘定の財政均衡により、報酬比例部分は厚生年金勘定の財政均衡により調整期間が決定される仕組みであるため、その後の経済状況の変化等により乖離が生じ、基礎年金の調整期間は報酬比例部分より長期化する見通しとなっていた。

厚生労働省ホームページ▶田村大臣会見概要(令和3年9月10日㈮)
厚生労働省ホームページ▶第86回社会保障審議会年金数理部会 資料(令和2年12月25日㈮)
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