年金時代

[協同労働]労協連「協同労働・よい仕事研究交流全国集会2022」3月5日全体会⑵基調提起

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(=労協連)は3月5・6日、「協同労働・よい仕事研究交流全国集会2022」をオンラインで開催した。5日の全体会では⑴座談会⑵基調提起⑶パネルディスカッション、6日は40の分科会に分かれグループ討論を行った。
全体会⑵基調提起では、労協連センター事業団専務理事の馬場幹夫さんが「労働者協同組合法第1条(目的)を体現する協同労働のよい仕事を深め、その広がりの中で10月1日の法施行を迎えよう」と訴えた。(*1~3は編集部の注。)

労働者協同組合法第1条(目的)を体現する協同労働のよい仕事を深め その広がりの中で法施行(10月1日)を迎えよう!

馬場幹夫さん(労協連センター事業団専務理事)

労働者協同組合法―第1条の重み…公共性

「協同労働・よい仕事研究交流全国集会2022」のテーマは、今年施行される労働者協同組合法(以下、労協法)第1条(目的)*1を体現する協同労働・よい仕事を深め、10月1日の法施行を迎えようということだ。労協法第1条には、同法の3つの目的である①多様な人たちが働く職場づくり②地域で必要な仕事づくり③持続可能な地域づくり――について記され、その目的を目指し、よい仕事を実践していこうということだ。

これらの目的に応じて、この集会にも3つの目的がある。1つ目が、とくに大事なこととして、労協法が施行されるこの時代において、協同労働・よい仕事とはいったい何かということを2日間かけてじっくりみんなと深め合いたい。改めて、一つひとつの仕事の価値の転換を図っていこう、いま、携わっている仕事にとどまらず、新しい仕事づくりの可能性を絶えず、結んでいこうということが、①の内容とするところだ。

*1:労協法第1条は同法の目的を次のように記している。
「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。」

波乱含みの世界の状況

現実をまず直視しようということで、「ウクライナとロシア」「東アジアの緊張の高まり」「日本―安全保障関連法案」の大きな情勢を3点挙げた。プーチン大統領の独裁的なやり方とは違う協同労働の可能性が、この情勢の中からも、ほんとうに求められているのではないかと思う。
日本も2015年に安保法が成立した。また今回の集会の実践レポートの中には、核禁止条約について書いているなかまがいた。唯一の被爆国である日本が軍事費に莫大なお金をかけ、武装するのではなく、対話をして平和な社会を目指していくことが、わたしたちの目指すよい仕事ではないかとレポートの中に書かれていた。

教育学者の太田堯先生は、「命」には3つの特徴があるとして、あらゆる命はみんな違う。そして命は、自ら育つ力がある。そして3つ目が、人とのあらゆる関係性の中で命は育まれるということを言っている。この命の特徴から、太田先生は、労働者協同組合が未来的志向、未来的な価値を創造していく唯一の団体として、協同労働という働き方を通して、未来的な価値を創造していく希望だと言っていた。

わたしたちの協同労働の協同組合の原則の中には次のように書かれている。「私たちは、直面している。人間、労働、地域、自然の限りなき破壊に。だからこそ、つくり出したい。貧困と差別、社会的排除を生まない社会を。だれもがこころよく働くことができる完全就労社会を。あたたかな心を通い合わせられる、平和で豊かな、夢と希望の持てる新しい福祉社会を。私たちは宣言する。「失業・貧乏・戦争をなくす」という先人たちの誓いと、「相互扶助」「自治と連帯」「公平と公正」という国際的な協同組合労働の精神を引き継ぎ、協同労働を基礎にした社会連帯の運動を大きく広げ、市民自身が地域の主体者・当事者となる、自立と協同の新しい時代をいま、ここに、共に、切り拓くことを。」*2

改めて、労働者協同組合法が成立し、基本原理に、「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事すること」が明記された。とくにこの意見反映、話し合って社会をつくっていく、そこに大きな、新しい未来的な価値をこの法律の中に示してくれているのではないかと思っている。

*2:平成27年(2015年)6月27日の日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会第36回定期総会において採択された「協同労働の協同組合の原則」(一部)

若者の4人に1人が自殺を考えたことがある~未来への展望が見出せない社会に

2つ目に、いま若者が未来に希望を持てないという現実に置かれている社会だということを直視したい。わたしたちの全国の現場では、引きこもり家族の会といっしょに活動している地域がかなりある。いっしょに居場所づくりをしていこうということで、光が見えてきている地域もたくさんあるのだが、あるご家族が、「働く場が変わらないと、いつまでたっても息子は社会とつながれない。虚無感と虚しさを感じ、引きこもり家族会を退会する」と言ってきた。しかし、「ワーカーズコープ(労働者協同組合)の活動だけは希望を感じるからいっしょにやっていきたい」と言ってくれた。小さな希望をいっしょにつくっていく。こういう思いを持つなかまや家族がたくさんいるのではないかと思う。改めてこうした暮らしの実感をていねいに拾っていくことが、協同労働のよい仕事として、必要ではないかと感じている。

また、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読んで、労働者協同組合に入団する若者が増えている。センター事業団の本部で働いているなかまもそのひとりだと思うが、労働者協同組合に入って、ちいさな視点が社会を変えていくということ。そして、その中で、職場民主主義をつくっていき、小さな流れの変化をつくっていくことを労働者協同組合に入って実感していると言ってくれ、たいへんうれしかった。

コロナ禍の孤立と貧困・分断の深まり

そして、もう一つ、コロナ禍により孤立と貧困・分断が深まっている状況も直視しなければならない。労働者協同組合の会場を使って、数ヵ月に1回相談会をほかの団体と提携しながらやっているが、女性のための相談会では、派遣で働いている方が相談に来て、ほんとうに厳しい状況に置かれて働いているのだが、いまはコロナの影響で、その厳しい状況がむき出しになっていると改めて感じた、と相談に対応した弁護士が言っていたが、その弁護士も、労働法で対応できることだけではなく、自発的に相談できる「みんなのおうち」*3のような場所が必要ではないかと話していた。

*3:「特定非営利活動法人みんなのおうちは、都会で子育てを通して知り合った家族が集い、親睦と交流を図る事業を中心に行い、子育ち・子育て支援や都市コミュニティーの再生に寄与します。」(特定非営利活動法人みんなのおうちホームページより)

 労働者協同組合法の動向

労働者協同組合法の動向についても少し触れたいと思う。同法は2020年12月に成立してからの1年3、4ヵ月の間で、協同労働の局面が大きく変わった。超党派による協同労働推進議員連盟が発足して、都道府県主催の基礎自治体向けの横断学習会や、基礎自治体が主催する住民向けの学習会といった協同労働を普及する動きが、加速度的に動いている。国のほうでも、協同労働を普及させていく政策づくりに、いまいろいろな省庁が動き始めている。

 協同労働実践交流全国集会の教訓

こうした中、協同労働の職場づくりを培った力を地域づくりに生かしていこうと、協同労働実践交流集会を昨年10月に開催したが、それは協同労働を実践するとはどういうことかを全国のなかまと学び合う大きな場であった。働くなかまとの協働性の関係では、さいたま南事業所が経営改革を通して、働くなかま同士お互い認め合い、寄り添う力やあきらめない力が生まれたという発言があった。また、新宿わかばからは、組合員一人ひとりの思いを事業所の運営に生かしていく試みが紹介された。リーダーのあり方では、埼玉西部(所沢)が、副所長が自分の弱さと向き合いながらも、それを支えようとしてくれたなかまの存在に気づき、自分自身のリーダーの在り方を認め、なかまといっしょにがんばっているという報告があった。

そしてこの半年間、なんでも言い合える関係づくりとして、協同労働×当事者研究がいまスタートしている。協同労働×当事者研究をすることで、主体性が芽生えたという印象的な発言も聞いている。

 組合員・市民・行政・利用者の中に底深い変化が生まれている

この1年3ヵ月の間に、組合員・市民・行政・利用者の中に底深い変化がたくさん生まれてきている。法制化記念フォーラムの後には地域からの期待として、福井のなかまにはあらゆる相談が持ち込まれてきている。きょう、この後のパネルディカッションでゲストとしてご報告いただくメノビレッジ長沼では、北海道長沼で街づくり講座をとおして、住民といっしょになって協同労働を活用して、新しい持続可能な地域づくりの実践が生まれてきている。

また、放課後等デイサービスすてっぷの保護者は、「障害のある息子が生まれ育ったこの地域で育っていきたい、そのためには協同労働が必要で社会連帯経営が必要だ」という発言をされていて、その話を聞いて、きょうのパネルディスカッションでコメンテーターをされる北海道大学の宮﨑先生は、利用者や地域の願いや困りごとを受け止めてともに実らせていく社会的装置が協同労働の役割ではないかとコメントをされた。

 「みんなのおうち」運動は、労協法制定時代の協働労働運動の基本路線

いま全国的に「みんなのおうち」運動が精力的にすすんでいる。きょうパネルディスカッションで報告していただく、手稲や熊谷、登米、名古屋の取組みは、みんなのおうちにおける労協法第1条を実践する報告として、参加者のみなさんが大いに学び合いたいと思っている。

 協同労働で担う「市民主体の公共の創造」へ

最後の5つ目は、「協同労働で担う「市民主体の公共の創造」へ」ということを挙げた。改めて協同労働・よい仕事とは何か。働くとは、命へ働きかけ、分断を超えて、多様な命のつながりとその中から未来を創造する仕事だ。改めて全国のなかまが書いた個人レポートからなかま同士の一致点を見いだすみんなのおうちづくり、そしてまちづくり講座から市民といっしょになってあらゆる地域づくりに向かっていく法制化運動等、まちづくり等推進ネットワークを一つのこととして自分たちの手でこの1年間描き出していきたい。そして、「共生」を人間社会にとどめず、生物多様性を基礎とする、持続可能な自然共生社会へ挑戦していこう。

2日間にわたる、協同労働・よい仕事実践交流集会、大いに議論した内容で学び合いたいと思う。

(文責:年金時代編集部)
年金時代