年金時代

[協同労働]労協連「協同労働・よい仕事研究交流全国集会2022」3月5日全体会⑶パネルディスカッション①センター事業団登米地域福祉事業所はっぴいディ

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(=労協連)は3月5・6日、「協同労働・よい仕事研究交流全国集会2022」をオンラインで開催した。5日の全体会では⑴座談会⑵基調提起⑶パネルディスカッション、6日は40の分科会に分かれグループ討論を行った。
全体会⑶パネルディスカッションでは、パネリストに日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団の①登米地域福祉事業所はっぴいデイ②名古屋事業所③熊谷・妻沼地域福祉事業所ほほえみと熊谷北出張所④手稲地域事業所、コーディネーターに同センター事業団南東北事業本部の小椋真一さんと北海道事業本部の石本依子さん、ゲストに⑤メノビレッジ長沼の荒谷明子さん、コメンテーターに⑥北海道大学大学院教授の宮﨑隆志さんらが集い、実践報告を交え「協同労働・よい仕事」を深め合った。今回は、全体会⑶パネルディスカッション①登米地域福祉事業所はっぴいデイの実践報告をお伝えします。

経営改革の取り組み――登米地域福祉事業所はっぴいデイ

はっぴいデイの古内さん(左)と高橋さん。

登米地域福祉事業所は2021年4月に、登米地域福祉事業所(はっぴいデイ)、心りっぷる登米事業所、登米鱒淵事業所の3つに分割され、登米福祉事業所ははっぴいデイ(高齢者デイ)のみとなった。分割以前より、登米地域福祉事業所は3年連続原価率100%を超えてしまい、また、同時期、介護度の高い利用者の利用終了が続き、収入はますます減少傾向となり、8月原価率は127.5%となってしまう。その後、利用者確保に取り組むがうまくいかず、いよいよ本格的な経営改革が必要になった。

そこで、経営改革の目標・課題として、①今年度は心りっぷる(多機能型)との収支合算で3ヵ月(2021年11月、12月、2022年1月)原価率100%を切ること②36万円の増収——を掲げ、経営改革に取り組んでいく。経営改革では、①経営改革会議②週間報告の提出③経費削減④営業活動(⑴『はっぴい通信』の配布⑵地域行事への参加)――の主に4つに取り組む。その結果、目標①の原価率100%を切ることを達成。目標②36万円の増収についても、12月時点で目標達成目前までこぎつける。

経営改革の取り組みについて、報告者の高橋さんと古内さんは、

・行動を起こしてから比較的早く結果に表せた。
・包括、居宅、支援学校などから問い合わせがあり、見学、体験、利用につなぐことができた。
・営業活動が地域交流の貴重な機会となった。
・自信が持てるようになってきた。
・利用者たちも協力してくれた(見学者の対応など)。
・9年間の丁寧なケアと実績ありきの成果。

――と振り返る。

その一方で、

・新規利用者7名のうち、5名が総合事業(保険収入高くない)の方。今後は要介護者の受け入れを増やしていきたい。
・営業は上手くいかないケースもあった。その都度反省点を共有し、見直しを行った。
・人件費の削減は、スタッフ全員の負担や我慢があって成立した。現在は状況に合わせて体制の見直しを図っている。

――と先を見据えた歩みをすでに始めている。

コーディネーターの小椋さん。

小椋さん:経営改革を行い、危機を乗り越え、道半ばまできているのは、スタッフ全員の力が結集されたからだと思う。ワーカーズコープには意見反映原則というのがあって、一人ひとりの意思が尊重され、それが経営に反映されていくという全組合員経営だと思うが、それを体現したのが登米のはっぴいデイではないか。経営改革に取り組むにあたって、前向きに取り組んでいる姿が印象的だった。改革に向かうにあたり、どんな心境で取り組んでいきましたか。

高橋さん:上に立っている人の一所懸命な姿を見ると、わたしたちも動かねばという気持ちにさせられた。またわたしも地域に密着した活動をしていたので、地域に出ることに対しては抵抗がなく、地域行事への参加では、グランドゴルフに行くことが楽しかった。

古内さん:所長の下で働くことが楽しく、雰囲気がいい。この地域がわたしの地元だが、地域行事の参加では行くときにはドキドキしたが、行ってしまうとグランドゴルフが楽しくて、わたしが子どものときの知り合いにも再会したりして、話をするのも楽しかった。また、営業活動も積極的にでき、通信の配布も楽しくできた。

小椋さん:地域に出るようになって、元気になったように見受けられた。地域に出ることで、地域にどんなニーズがあることを知りましたか。

高橋さん:集まっている方々を見て、寄り添ってあげたくなるような感じはした。はっぴいデイに来ればいいのになあと思った。

古内さん:グランドゴルフに参加したときに、コロナ禍で会えなかった人と会えて、生活上の相談をされたり、愚痴を言い合えたりした。世代を超えて、交流できる場の必要性を感じた。

宮﨑隆志北海道大学教授コメント❶はっぴいデイ

*「センター事業団登米地域福祉事業所はっぴいデイ」の部分についての宮﨑教授のコメントを抜粋掲載。
宮﨑隆志教授。
【プロフィール】北海道大学大学院教育学研究科教授、協同総合研究所理事。社会的に排除された人々の自立や回復に向けた学びの論理、およびそこにおいて求められる援助のあり方を探求。地域社会教育学(Community Education)としての学習・教育論を構築することが研究テーマ。

センター事業団登米地域福祉事業所はっぴいデイ、手稲地域福祉事業所、熊谷・妻沼地域福祉事業所ほほえみと熊谷北出張所については、社会連帯経営ということとの関係で考えてみたいのですが、登米については、経営再建の話から始まったので、たとえば中小企業でどうやって経営を立て直すのか、経営の合理化をいろんな無駄を省いてやっていかなくてはいけないという、これも一見すると同じふうに見えるわけですけれども、それは見た目だけの話であって、中身はちがった。わたしは勝手に地域基盤型経営と言っていたんですが、このコメントの中でその話は何度かしたことがあったのですが、地域に基盤をおいた経営、行動転換を遂げていくためのプロセスだった、努力の過程だったと言えると思うんですよね。

たとえば、デイサービスの事業ですけれども、利用者が増えてくれれば、これは経営の観点からするとありがたいんですが、利用者が増えるということは地域の中で健康を維持できない人たちが増えるということで、介護の必要性が高い人が増えるということだから、地域の人たちの健康を願う立場からすれば、ありがたくないことなんですね。その矛盾に直面しながら経営をやっていかなくてはいけない。これは医療の分野でもよく言われる話で、同じ問題が、ここでも表れている。こういう経営上の矛盾に直面したときに、よりよいサービスを提供して、より多くの利用者にこちらに来てもらい、競争に勝ち抜いて、生き残っていく方向に行くわけで、それが主たる動機になるわけです。

しかし、登米の実践は単純にそういうことではなかった。地域により深く根差すための経営構造の改革を行ってきた。地域に出るという言葉を何度も使われましたが、これは確かに営業活動のように見える。地域の人たちに知ってもらって、利用者を増やすための営業の一貫だと見えるのだけれども、そういう単純なものでもない。地域で困っているのに利用できない人たちがいる、そうであれば、そのニーズを掘り起こして、地域みんなで解決するための仕組みをつくる。そのための営業なんですね。そういうふうに考えていいのではないか。だから、地域の困りごとをみんなで解決する仕組みを作っていく。その仕組みの中の循環ポンプが労働者協同組合で、そういった問題解決のしかた、矛盾に対する解決のしかたを行うことが実は楽しさ、働くこと自体が楽しいという背景にあるのではないか、と思いますね。

そこから、登米の報告に関して言えば、社会連帯経営と言うけれども、原価率問題が必ず出てきます。社会問題を解決する運動ではあるのだけれども、すぐにお金になる活動ではない。そこで、協同労働で働くことのもう一つの側面である経営基盤を確立するという課題、それとどんなふうに統一していけばいいのかということが必ず出てきます。

(文責:年金時代編集部)

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